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ようこそ捜査第六課へ
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単に県警本部から日々の坂署へと転属になるくらいならば、ここまで気落ちすることもなかったであろう。むしろ、本店から支店へと異動するようなものだから、多少は気が楽になってもいいくらいだ。むろん、愛子に転属の話はしたものの、その転属先のことまでは話していなかった。元より、愛子は人の仕事に口を出したりするタイプではないため、この先も話すことはないだろうし、あえて自分から言い出すこともない。大幅に給与が下がるなんてことはないみたいだし、生活の水準が極端に下がることもない。それが例えリストラ対象の者が送られるリストラ部署だとしても。
――学校の七不思議というわけではないが、堀口の勤務する県警エリアにも、いくつかの都市伝説のような噂話があっま。
例えば、これから配属になる日々の坂署から比較的近い場所に、かつての凶悪殺人犯を収監している地下刑務所があるとかないとか。そこでは司法取引が当たり前のように行われていて、その凶悪殺人犯が特に凶悪な事件を解決している――なんて噂がある。それこそ学校の七不思議レベルの作り話のような噂である。ただ、これから堀口が配属される先は、それに比べるとかなりの信憑性があった。
――日々の坂署には、その存在意義自体が不明の第六課が存在する。そこにはリストラ対象となった問題児ばかりが集められているとかいないとか。
もちろん、それは地下刑務所と同じレベルの噂だったし、堀口自身も信じてはいなかった。だからこそ、公表もされず口頭と書類だけで六課への転属を告げられた時、堀口はキツネにつままれた気分になった。
日々の坂署。神座という歓楽街を中心にして広がる都市の南に位置する警察署だ。都市の中心部からはかなり離れており、のどかな景色の広がる郊外に、申し訳なさそうに姿を現わす建造物。明らかに景観を損ねている近代的建造物こそが、日々の坂署である。周辺が下町のような風情だからこそ、なおさらに浮いて見えるのかもしれない。
「まぁ、あまり無理はしないでね。仕事も大切かもしれないけど身体が資本なんだから……」
愛子は心配そうな表情を一瞬だけ見せると、遠くに見えてきた幼稚園のほうに向かって目を細める。子どもが好きなのか、それとも仕事が好きなのかは分からないが、仕事場に向かう愛子はいつもイキイキとしている。子どもを授かったことを、嬉しそうに報告してくれた愛子の姿を思い出すに、当たり前だが子どもが好きで堪らないのだろう。
――学校の七不思議というわけではないが、堀口の勤務する県警エリアにも、いくつかの都市伝説のような噂話があっま。
例えば、これから配属になる日々の坂署から比較的近い場所に、かつての凶悪殺人犯を収監している地下刑務所があるとかないとか。そこでは司法取引が当たり前のように行われていて、その凶悪殺人犯が特に凶悪な事件を解決している――なんて噂がある。それこそ学校の七不思議レベルの作り話のような噂である。ただ、これから堀口が配属される先は、それに比べるとかなりの信憑性があった。
――日々の坂署には、その存在意義自体が不明の第六課が存在する。そこにはリストラ対象となった問題児ばかりが集められているとかいないとか。
もちろん、それは地下刑務所と同じレベルの噂だったし、堀口自身も信じてはいなかった。だからこそ、公表もされず口頭と書類だけで六課への転属を告げられた時、堀口はキツネにつままれた気分になった。
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