巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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 ちなみに、他の課から回って来た案件を断る権利など、六課にはない。なんせスクラップだからだ。田之上が苛立っているのも、このような背景があるからなのかもしれなかった。なんせ、そもそも六課などという部署は、表向きには存在しないのであるから。

 まぁ、本来ならば懲戒免職というところを拾ってもらったような立場だから、文句なんて言えないし、だから田之上も仕方がなく従っているのだろう。

 そんな六課のメンバーはわずか三人。

 違法ドラッグ店に頻繁に出入りしているグループに近付き、なかば非合法のおとり捜査をやってのけた天野雅。雅の合図を待って、一瞬にして現場を支配下に置いた田之上竜司。そして、裏口に回った桂総士かつらそうし。第六課創設時からずっと同じメンバーである。

 時には都市伝説だなんてまで言われる第六課だが、居心地は非常に良い。正しく住めば都状態だ。定時に署に出向いて、定時に署を後にする。非番の日に呼び出されることもなければ、下手をすると一般のサラリーマンより待遇がいい。普段は仕事という仕事も与えられずに、署の中では税金泥棒と呼ばれることも多々あるが、人間というものは開き直ってしまえば、ある程度のことは気にならない。危険な仕事を押し付けられることもあるし、身に覚えのない失態を押し付けられることもある。それを除けば六課は非常に楽な部署であった。

「雅、一課の連中に報告してやってくれ。現場は鎮圧、とりあえず関係者全員を確保。後は俺達の仕事じゃねぇってな」

 相変らず銃を片手に容疑者達を威嚇する姿勢を見せている田之上が、雅のほうをちらりと見てから呟いた。

「りょうかーい」

 田之上の言う通り、もはや抵抗しようとするものなど一人もいなかった。雅が囮として潜り込んだグループも、田之上のパフォーマンスにすっかり縮こまっているのか、雅にすら畏怖の眼差しを向けている。これだから男はチョロい。少しばかり女の武器をちらつかせれば、簡単に気を許すのだから。

 スマートフォンを取り出すと、外で待機している一課に連絡する。こちらは危険な目に遭ってまで現行犯を検挙したのに、あちらは機動隊の後ろに構えて電話を待つだけで大手柄である。全くもって良い身分だ。

「えっとぉ、例のドラッグ違法疑いのお店のことなんだけどぉ。全員、確保しましたぁ」
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