巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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プロローグ

【プロローグ】1

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 薄暗い店内には小さく洋楽のナンバーが流され、お世辞にも仕切りとは呼べないような低い衝立ついたてで仕切られたボックス席では、数名単位のグループがそれを当然のように楽しんでいた。

 当然、クラブという名目なのだから酒も出てくるが、どうやら睨んだ通り、この店では酒よりも中毒性と快楽性の強いものを出すようだ。ざっと辺りを見回す限り、いぶした粉末をストローにて吸引するやり方。キメた人間の反応を見ると、アッパー系だろう。

 隣のボックス席では、店が満員御礼状態だというのに、男女が服を脱ぎ出し、性交渉まがいの行為が始まった。しかも複数人でだ。

「あ、あのぅ……。私、こういう店は苦手かもしれないんだけどぉ」

 黒髪のロングにやや露出の高いキャミソール。小柄でありながらスラリと伸びた長い足は、ショートパンツにより脚線美を更に際立たせる。少しは派手めな格好をしておけとは言われたが、ちょっとばかり度が過ぎたようだ。案の定、今日会ったばかりのチャラチャラした男が、さきほどからすきあらばスキンシップを図ってきている。

「大丈夫だって。これをキメちまえばすぐに気持ち良くなるからさ」

 カウンターから別の男が戻ってくる。男はアルミホイルの上に乗った粉末状のものをライターであぶると、それを彼女の前へと置いた。同じボックスに座った男達が、それぞれ彼女の胸元へ、彼女の足へ、彼女の顔へと視線をやり、ニヤニヤとしている。

「でもぉ、これっていけないクスリだよねぇ。警察にばれたら大変なんじゃないの?」

 彼女は手渡されたストローを手に、あえて少し怯えているかのように表情をかげらせた。

「心配いらないよ。警察だってこんな郊外のクラブまでこないって。それよりも、騙されたと思ってキメてみろよ。これ、凄ぇから」

 ストローを手に戸惑っている――ように振る舞う彼女に、男達は期待をはらんだようないやらしい目を向けてくる。隣のボックス席からは露骨な喘ぎ声が漏れ初めていた。どうせ同じようなことをする算段でいるのであろう。

 彼女はストローをテーブルに置くと、黒髪の下に隠して耳にかけていたインカムのマイクに呟いた。

「間違いなかったよ。やっぱりここ、違法ドラッグの密売店みたい」

 彼女が呟くとインカムの向こう側からノイズ混じりで「了解」と返事があり、勢い良く入り口の扉が開け放たれた。一斉に店内の意識が入り口のほうに向かう最中、スーツ姿の男二人が飛び込んでくる。
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