BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
228 / 231
エピローグ【解決編】

13

しおりを挟む
 春日は晴美とアガサを除き、学校にいたメンバーの名前を書き出す。ここから、男性であることが確定している人物を除外するのだ。むろん、春日達は互いの姿を見ているから、互いの性別くらい簡単に判別できる。だが、あえて作中の文章だけに頼って性別を判断する。そうしなければ、アガサの思惑を論破したことにはならない。

「まず比嘉だ。彼に関しては、気を失った瀬戸に手を出そうとしているし、その際に【男性のそれをそそる】との記述がある。よって、彼が男性であることを確定させてもいいだろう」

 ノートに書いた人物名から比嘉の名前を二重線で消した。言動などで男性であろうことが分かっても、あえてロジックに基づいて性別を確定させなければならない。そうしなければ、アガサも納得しないであろう。

「次に、比嘉と私達がやり合った場面。突如として上がった男性の声に【間違いなく例のスーツ姿が発言したのであろう】との地の分が続く。このスーツ姿とは、比嘉目線で陸士長と一緒に学校へと侵入した私のことを指している。よって、私自身もまた男性であることが確定する」

 今度は自分の名前を二重線で消す。自分の性別は分かりきっているものの、あくまでも作中の情報から性別を確定させる作業をするのは、なんだか変な感じである。アガサは比嘉の言葉に耳を傾け、時折頷いたりするだけで、なんだか春日の独壇場のようになってしまっていた。

「続いて、比嘉を取り押さえる際に【金髪の男】と【関西弁のようなイントネーションの男】が登場する。これは水落と深田ということになるだろう」

 春日はそのまま流れ作業のごとく、水落と深田の名前に二重線を引いた。この時点でまだ数名残ってはいたが、しかしヒントと照らし合わせると、この時点で誰が女性だったのか確定してしまう。

「ここで最終的に犯人役の候補に残っていたのは誰なのかを考えて欲しい。最終的な候補に残ったのは水落、深田、陸士長だった。そして、犯人役の条件は――成人した女性であることだ。水落と深田はすでに作中で男性であることが確定しているから、ヒントが示す条件を満たすことができていないことになる。となると、これまでの情報を統合して消去法で考えると――」

 春日はそう言うと、陸士長の名前に二重丸をつけた。ヒントを総合的に考えても、条件を満たせるのは彼女しかいないのだ。

「陸士長こと池田翼しか残らないんだ。彼女こそが【ブービートラップ】の条件を唯一満たしている人物だったんだよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】知られてはいけない

ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 (第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。  新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。  現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。  過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。  ――アリアドネは嘘をつく。 (過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作
ミステリー
 窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。  事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。  不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。  これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。  ※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.4』

M‐赤井翼
ミステリー
赤井です。 「元女子プロレスラー新人記者「安稀世《あす・きよ》」のスクープ日誌」シリーズも4作目! 『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!』を公開させていただきます。 昨年末の「予告」から時間がかかった分、しっかりと書き込ませていただきました。 「ん?「焼飯の金将」?」って思われた方は12年前の12月の某上場企業の社長射殺事件を思い出してください! 実行犯は2022年に逮捕されたものの、黒幕はいまだ謎の事件をモチーフに、舞台を大阪と某県に置き換え稀世ちゃんたちが謎解きに挑みます! 門真、箱根、横浜そして中国の大連へ! 「新人記者「安稀世」シリーズ」初の海外ロケ(笑)です。100年の歴史の壁を越えての社長射殺事件の謎解きによろしかったらお付き合いください。 もちろん、いつものメンバーが総出演です! 直さん、なつ&陽菜、太田、副島、森に加えて今回の準主役は「林凜《りん・りん》」ちゃんという中国からの留学生も登場です。 「大人の事情」で現実事件との「登場人物対象表」は出せませんので、想像力を働かせてお読みいただければ幸いです。 今作は「48チャプター」、「400ぺージ」を超える長編になりますので、ゆるーくお付き合いください! 公開後は一応、いつも通り毎朝6時の毎日更新の予定です! それでは、月またぎになりますが、稀世ちゃんたちと一緒に謎解きの取材ツアーにご一緒ください! よ~ろ~ひ~こ~! (⋈◍>◡<◍)。✧💖

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

処理中です...