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ダイニング イン ザ ダイ【午後8時〜午後9時】

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「おい、黙ってないで答えろや! 何がどうなったらこうなるんやっ!」

 深田からの叱責が春日の胸に次々と突き刺さった。深田にとっての片岡は、春日達と合流する前からの仲だ。誰よりも片岡を気にかけていたのは深田だったし、誰よりも親しかったのも深田である。それなのに、片岡がこのような目に遭ってしまったのだ。それが苛立ちとなり、声となって表面上に出てしまうのは、人として仕方ないのかもしれない。

「言いわけのしようがない。これは私の判断ミ……」

 深田に対し、春日は素直に詫びようと思った。しかし、頭を下げる直前に見てしまったのだ。深田にノックアウトされたはずのナタ女の指が、ほんの少し動いたのを。春日は思わず飛び退いた。

 確かに、この事態を招いてしまった要因には、春日の判断ミスも含まれるであろう。けれども、大きな要因であり原因でもある元凶は、まだ死んだわけではないのだ。深田の一撃により、一時的に気を失っただけで、まだ生きている。

「……やはり、詳しい話は後にしよう。片岡の手当てが先だ」

 深田に対してというよりも、水落に向かって呟く。そして、春日はデッキブラシを拾い上げた。

「おい、俺の話を聞いてんのか? 何が起きたんか聞いてるんや!」

 深田はナタ女が完全に気絶していると思い込んでいるのだろう。

「いいから行け。私は調べたいことがある。君は一刻も早く片岡の手当を……」

 納得はしてはいないが、片岡のことが心配なのであろう。深田は片岡と春日の間に視線を泳がせながら、小さく舌打ちをする。片岡をかばいながら、もう一度ナタ女とやり合うのは、被害を拡大させる恐れがある。ここはリスクを承知で、春日が残るべきだった。それが、判断ミスをしてしまった責任の取り方だ。これ以上誰かを傷付けるわけにはいかない。

「片岡が死んでもいいのかっ! 早く行けっ!」

 それを後押しするかのように、春日は怒号を上げてやった。それが決定打となったのか、春日と深田の二人で片岡を抱え、校舎のほうへと向かって駆け出した。

「仲間が死にかけてんのに、あんたは調べもんか! 見損なったわっ!」

 深田の捨て台詞が胸をえぐったが、春日はこれでいいと思っていた。自分らしくない責任の取り方ではあるが――もう恐らく片岡は助からない。ゆえに、これくらいのことをしなければ、春日自身が納得できなかった。きっと深田だって納得してくれないだろう。

 ――この落とし前は、しっかりとつけさせてもらう。
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