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動き出した狂気の果てに【午後7時〜午後8時】

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 もしもランダムにアルファベットが割り振られているのであれば、13のヒントのうち3つは【U】~【Z】が割り振られる計算になる。しかしながら、実際のところ15のヒントに対して【U】が割り振られているだけだ。ゆえに、ランダムに割り振られていると考えると、あまりに不自然なのである。

「その通り。つまり、ランダムにアルファベットが割り振られている可能性は低く、何かしらの意図があって【U】が割り振られていると考えられるってこと――」

 この不自然さの答えはどこにあるのか。現状ではどうにもピンとこない。ここから先はまだ未知の領域というか、新たにヒントが手に入らなければ、どうにもならないだろう。

「ただ、そこから先はまだ断定できないというか、それが分かったからどうこうなるというレベルに達していない。結局のところ、全ての【固有ヒント】が集まらねば、答えは弾き出せない仕様になっているのかもしれない」

 引っかかる点はある。けれども、それの全容を明らかにするには、材料となる【固有ヒント】が足りない。現状では【U】~【Z】のアルファベットが含まれる割合が極端に少ないが、もしかすると残りの【固有ヒント】全てに【U】~【Z】が割り振られている可能性だってゼロではない。

 ――ふと、良い匂いがした。それは本能をくすぐる食べ物の香りだ。実は調理実習室ではアガサ達が食事を作っていた。なんでも、食材が存分に用意されていたとかで――本来ならば晴美もそこに加わっていたはずなのに、こっちのほうへとやって来た次第だ。

「なんにせよ、腹が減っては戦はできぬ――や。飯にしよか。飯に。ここを降りるにせよ、頑丈なロープが必要やし、面倒な問題はとりあえず後回しや」

 深田がそんなことを言い出したからだろうか。春日の腹の虫がやけに自己主張をする。丸々24時間くらいなら、何も口にせずとも問題ないだろうと踏んではいたが、やはり腹は減るものだ。携帯食糧は配布されてはいたが、どうせならしっかりとしたものを食べたいと思うのが人間なのであろう。

「そうだな。今後のこともみんなと話しておきたい。一旦、食事にしよう」

 晴美は何も言わなかったが、女性であろうと男性であろうと腹は減る。むしろ、彼女からの反論がないということは、賛成であると解釈してもいいだろう。

 雨は止む気配がなく、むしろ激しさを増す一方だ。先行きが不安な雲行きにつられてか、何か不穏な空気を感じたような気がしたのは、果たして春日の気のせいなのか。それとも――。
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