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闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】
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人間なんてものは、その心の奥底で何を考えているかなんて分かったものじゃない。信頼なんてものは、表向きの人間関係を潤滑に回すだけのものであり、上手くいっている間柄でも、お互い相手に不満を持っていたりする。人間が二人以上集まれば、必ず軋轢というものが生まれてしまうわけだが、日本人はその軋轢を表に出さず、表面上は取り繕う能力に長けている。平和的といえば平和的であるが、別の言い方をすれば、単純に陰湿なだけなのかもしれない。
幸いなことに迷彩服達と女共は初対面同士。時間的にも互いの状況を把握する時間はなかったはず。だからこそ、この揺さぶりは有効。簡単に他人を信じようとする良い子ちゃんであればあるほど、効果を発揮する。
人間は基本的に一人。一人で生まれてきて一人で死んでいく。その根本的なことを理解できている人間こそ、このような状況に強い。
迷彩服が比嘉と女共の間に視線を往復させる。面白いくらいに揺さぶられてくれたようだ。
「さて、どうするんだ? 俺とそこの女共、どっちを信じるんだ? 俺は別に構わないんだぜ。どっちを信じてもらってもよ」
元より迷彩服達と手を組むつもりはない。比嘉の目的は他の参加者と仲良しこよしをしながら、他の参加者を一人ずつ探すなどという、気の遠くなるような作業をすることではない。参加者の中に必ず潜んでいる犯人役を殺すことなのだから。
「とにかく、互いに武器を持っているのはよろしくない。そちらの言い分を聞くためにも、お互いに武器を手放さないか?」
廊下のほうから男の声がする。となると、まず間違いなく例のスーツ姿が発言したのであろう。
「確かに、その物騒なものを向けられてちゃ、平和的な話し合いはできねぇなぁ――」
ライフル銃が本物だろうが偽物だろうが、相手が武器を手放すというのであれば、それに応じておいて損はない。もっとも……比嘉は武器を手放す気などないのだが。手放したいやつが勝手に手放すだけの話だ。
「では、いち、にの、さんで互いに武器を手放そうじゃないか。どちらの言い分が正しいのか――判断するのはそれからだ」
「ちょっと、私達のことが信用できないってこと?」
スーツ姿の声に高飛車な女がヒステリックな声をかぶせる。
「そういうわけではない。現状を統合的に考えたいというだけだ。もちろん、両者の言い分もしっかりと聞かせてもらう」
廊下の向こう側で揉めているようであるが、比嘉にとって実に都合の良い流れになっている。こちらが躊躇うことなく人を殺せるなんて思っていないのだろう。
幸いなことに迷彩服達と女共は初対面同士。時間的にも互いの状況を把握する時間はなかったはず。だからこそ、この揺さぶりは有効。簡単に他人を信じようとする良い子ちゃんであればあるほど、効果を発揮する。
人間は基本的に一人。一人で生まれてきて一人で死んでいく。その根本的なことを理解できている人間こそ、このような状況に強い。
迷彩服が比嘉と女共の間に視線を往復させる。面白いくらいに揺さぶられてくれたようだ。
「さて、どうするんだ? 俺とそこの女共、どっちを信じるんだ? 俺は別に構わないんだぜ。どっちを信じてもらってもよ」
元より迷彩服達と手を組むつもりはない。比嘉の目的は他の参加者と仲良しこよしをしながら、他の参加者を一人ずつ探すなどという、気の遠くなるような作業をすることではない。参加者の中に必ず潜んでいる犯人役を殺すことなのだから。
「とにかく、互いに武器を持っているのはよろしくない。そちらの言い分を聞くためにも、お互いに武器を手放さないか?」
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「確かに、その物騒なものを向けられてちゃ、平和的な話し合いはできねぇなぁ――」
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