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闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】

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 春日はそう言うと、ひっそりと静まり返った学校のほうへと視線を移す。水落の上背よりやや低い塀の向こうに見える真っ暗な建物は、随分と冷たいように感じられた。

「ただ、出会うやつらが必ず協力的だとは限らんけどな――」

 辺りが暗くなってきたから表情の変化を見たわけではない。しかし、深田の言葉に春日が眉をひそめたような気がした。

「それはどういう意味だ?」

「そのまんまの意味や。俺達は運良く、協力的な人間同士で集まっとる。ただ――どいつもこいつもが協力的だと限らん。他の参加者と合流するのはいいけど、それが必ずプラスにはならんと俺は思う」

 深田の一言に、はたと水落は気づかされる。それは、誰もが頭の片隅には置いていたものの、あえて見ないように――考えないようにしていたことなのかもしれない。

 水落は自然と浜野のほうへと視線をやっていた。目が合ってしまい、慌ててそらす。正直、彼に関しては協力的であるとは言えないような気がする。当事者でありながら、第三者目線というか、誰かがなんとかしてくれる――誰かがなんとかしろ、みたいなスタンスに感じられるのだ。他に気にしている人間はいないみたいだが、水落は彼の存在がチームワークを乱す要因になるのではないかと、ほんの少しだけ警戒していた。

「しかし、他の参加者と合流しないことには、新しい【固有ヒント】が手に入らない。それはすなわち、いつまで経っても犯人役の特定ができないことを意味する。君の言っていることも一理あるが、仮にそのような参加者がいたとしても、リスクを背負って――」

「し、死ぬのを待てばいいじゃないか」

 春日の言葉を途中で遮ったのは、深田ではなく浜野だった。そのたった一言。ごくごく当たり前のように扱っている言語の組み合わせの中で、浜野が口にした組み合わせは、その響きだけでも背筋が冷たくなるような気がした。

「さっきも新たに人が死んだよな? 人が死ねば、そいつに与えられていた【固有ヒント】が、勝手に端末に転送されるんだ。だったら、わざわざ危険な目に遭ってまで【固有ヒント】を手に入れようとする必要はない。死ぬのを待てばいいんだから。それに――もし、相手が協力的ではなく、むしろこちらに危害を加えるようなやつなら……」

「その先は言うな。言う必要がない!」

 春日が珍しく声を荒げるが、水落はしっかりと聞いてしまった。浜野の漏らした禁忌の一言を。

「殺せばいいじゃないか――」

 浜野の一言の後に訪れた沈黙が、全てを物語っていた。誰もが分かっていながら決して口にしなかったもの。いざ、第三者の口から聞いてみると、実におぞましかった。
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