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狂気には凶器を【午後4時〜午後5時】
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振り返ろうとしたが、また世界が大きく揺れた。床に転がったエアガンが視界の隅に入る。どうやら、こいつを直接投げつけられたらしい。拳銃そのものは本物ではないかもしれないが、リアリティーの追求のため、重さを本物に似せるエアガンは珍しくない。そんなものが後頭部に当たったものだから、軽い脳震盪を起こしているのかもしれない。
「ずっと様子を見てたけど、あんた最悪ね。私にも手を出そうとしていたわけだし――まぁ、たった今しがた本性を見せてくれたけど」
ようやくベッドのほうへと振り返ると、女がベッドから降りるところだった。バタフライナイフを向けようとするが、しかし照準が定まらない。よほど当たりどころが悪かったのか、辺りの景色が二重になって見える。
「どうせそれだって、偽物かなんかなんでしょう? 刺したら引っ込むナイフ的な――」
容赦なく歩み寄ってくる女。これは本物のバタフライナイフである――と言わんばかりに女へとナイフを向けたつもりだったが、ナイフの切っ先はあさっての方向に向けられていた。そうこうしているうちに、女は比嘉の目の前に立っており、目が合うとにっこりと笑顔を見せた。
「とりあえず、あんたみたいな男は去勢したほうがいいわねっ!」
笑顔のまま語気を荒げた彼女。次の瞬間、比嘉の股間に説明しがたい衝撃が走った。それは、決して女性には分からない痛み。男性でさえ、股間を蹴り上げられるという屈辱的な状況と一緒に、この痛みに襲われることはまずないだろう。
あまりの痛みに声も出ず、その場にうずくまってしまう。それは比嘉の意思ではなく、男としての本能的な反応だったのかもしれない。大切な生殖機能を守ろうとする本能だ。
「今のうちに行くわよ」
女の声が聞こえ、アガサの「は、はい」という戸惑った様子の声が聞こえてくる。床に転がったエアガンは拾い上げられ、そして引き戸が開く音がした。ふたつの足音が保健室を後にする。でも、股間の痛みはいぜんとして比嘉を苦しめた。
「くそ――お前ら絶対に殺す。覚えてろよ」
まるで絵に描いたような悪党の台詞。そんな言葉しか出てこない自分の頭は、もしかするとかなり深刻なのかもしれない。出血はしていないが、頭の場合は出血しないほうが危険だったりするわけであるし。意識し始めた途端に、頭はズキズキと痛み、そして股間は例えようのない、じっとしてはいられない痛みに襲われる。そんな比嘉を残して、ふたつの足音は遠ざかっては消えたのであった。
「ずっと様子を見てたけど、あんた最悪ね。私にも手を出そうとしていたわけだし――まぁ、たった今しがた本性を見せてくれたけど」
ようやくベッドのほうへと振り返ると、女がベッドから降りるところだった。バタフライナイフを向けようとするが、しかし照準が定まらない。よほど当たりどころが悪かったのか、辺りの景色が二重になって見える。
「どうせそれだって、偽物かなんかなんでしょう? 刺したら引っ込むナイフ的な――」
容赦なく歩み寄ってくる女。これは本物のバタフライナイフである――と言わんばかりに女へとナイフを向けたつもりだったが、ナイフの切っ先はあさっての方向に向けられていた。そうこうしているうちに、女は比嘉の目の前に立っており、目が合うとにっこりと笑顔を見せた。
「とりあえず、あんたみたいな男は去勢したほうがいいわねっ!」
笑顔のまま語気を荒げた彼女。次の瞬間、比嘉の股間に説明しがたい衝撃が走った。それは、決して女性には分からない痛み。男性でさえ、股間を蹴り上げられるという屈辱的な状況と一緒に、この痛みに襲われることはまずないだろう。
あまりの痛みに声も出ず、その場にうずくまってしまう。それは比嘉の意思ではなく、男としての本能的な反応だったのかもしれない。大切な生殖機能を守ろうとする本能だ。
「今のうちに行くわよ」
女の声が聞こえ、アガサの「は、はい」という戸惑った様子の声が聞こえてくる。床に転がったエアガンは拾い上げられ、そして引き戸が開く音がした。ふたつの足音が保健室を後にする。でも、股間の痛みはいぜんとして比嘉を苦しめた。
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