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狂気には凶器を【午後4時〜午後5時】

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「比嘉さんのおっしゃる通り、犯人の正体を暴くには【固有ヒント】に頼らざるを得なくなります。犯人自身に犯人だという自覚がなく、実際にブービートラップという存在は罪を犯したわけではなく、犯人役という象徴にすぎません。犯人自身が自分が犯人だという自覚がない以上、言動や仕草でボロを出すこともありません。だから【固有ヒント】が重要になってきます」

 なんというか、結局のところ行き着いた着地点は、ごくごく当たり前の着地点だった。アガサの着眼点などに興味を持っただけに、なんだかひどくガッカリした。

「それで、俺とヒントを共有したところで、なにか分かったのか?」

 もっとも面倒な部分になるのだが、この【固有ヒント】なるものは、ある程度の数が揃わなければ意味をなさない。慎重に事を運ぶのであれば、全ての【固有ヒント】を集めてから推察するのがベストと言える。だから、この問いかけはいじわるだったのかもしれない。

「うーん、亡くなった方の【固有ヒント】も含めて考えてみますね」

 アガサはそう言うと、口頭にて現在分かっている【固有ヒント】を口にする。比嘉が初めて【固有ヒント】を共有した相手ならば、死亡した人間の分も含めて、アガサのSGTには5種の【固有ヒント】が集まっているはずだ。

 ――ヒント【A】 《答え 》が揃えば本物の【固有ヒント】も明らかになるだろう。

 ――ヒント【C】 ブービートラップは社会人ではない。

 ――ヒント【M】 ブービートラップは既婚者である。
 
 ――ヒント【S】 本物の【固有ヒント】は全部で3つである。

 ――ヒント【B】 ブービートラップに与えられた【固有ヒント】は偽物である。

「これが現状で分かっている【固有ヒント】になるわけですけど――うむむむむむ、これだけだと様々な可能性がありますから、なんとも言えませんね」

 思わず笑ってしまいそうになった。それっぽいことを言っておきながら、最終的に行き着いた先が、あまりにも当たり前だったから。彼女の言う通り、ある程度の【固有ヒント】が集まらなければ、考察のしようがないのである。もっとも、比嘉は最初から【固有ヒント】に頼るつもりがなく、考察するつもりも全くないから、もしかすると現状でなにか分かるようになっているのかもしれないが。

「結局のところ、他の【固有ヒント】を集めないと駄目ってことか――」

 一応、フレンドリーな医大生を演じている比嘉は、わざとらしく落胆したように振る舞う。
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