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わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】
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それは、あまりにも唐突だった。スピーカーのノイズらしきものが鳴り響いたと思ったら、音楽が流れ始める。これまた音程が外れているが、水落も知っている曲だった。確か曲名は『遠き山に日は落ちて』だったはずだ。
「今度は一体なんだ――」
警戒するかのように春日が立ち上がると、子どもを複数集めてお遊戯会をさせているかのような、実に無邪気な声が聞こえてきた。呆然としつつも、それに耳を傾ける水落と春日。互いに言葉もかわさずに、ただただ耳を傾け続けた。その放送が終わっても、まだにわかには信じられなくて、水落は改めて異常な場所にいることを再認識する。
放送の内容を要約すると――人が死んだらしい。しかも一度に二人もだ。水落からすれば、どこの誰なのかも分からなければ顔も分からない。どんな人であるのかさえ知らない赤の他人。けれども、ニュースや新聞などで赤の他人が亡くなったことを知った時のような余裕はなかった。なぜなら、亡くなったのはゲームの参加者だからだ。水落と同じく、このゲームに参加を余儀なくされた人が亡くなったのである。他人事であって他人事ではなかった。
「――想定はできたが、もう犠牲者が出てしまったか」
春日の言葉に水落は頷くことしかできない。亡くなったのは二人とも苗場という姓らしく、もしかすると親族関係にあった可能性がある。ノイズ混じりの放送だったから、しっかりと名前までは聞き取れなかったが、とにもかくにも小学校で、苗場という姓の二人が亡くなったことだけは間違いないようだった。
正直、水落はショックを受けていた。まだ心のどこかで冗談ではないかと思っていた。万が一の可能性であっても、ドッキリかなにかなのではないかと期待していた。目覚めた直後、なんの説明もなしに罠に殺されそうになった水落でさえ、なにかの間違いではないかと、心のどこかで思っていた節があるのだ。まだ罠の恐怖すら知らない参加者にとって、今の放送は重く現実を突きつけたのではないだろうか。
春日のほうへと視線をやると、彼は冷静にSGTを取り出そうとするところだった。
「ルールの通りであれば、亡くなった人の【固有ヒント】がSGTに転送されるはずだ」
事実だけを見据えた春日の言葉には心強さがあったのだが、それと同時に春日が冷酷な人間のようにも見えた。きっと水落の頭の中が少しパニックを起こしつつあったから、そのように見えてしまったのかもしれない。それほどに春日から動揺した様子が伝わってこなかった。
「今度は一体なんだ――」
警戒するかのように春日が立ち上がると、子どもを複数集めてお遊戯会をさせているかのような、実に無邪気な声が聞こえてきた。呆然としつつも、それに耳を傾ける水落と春日。互いに言葉もかわさずに、ただただ耳を傾け続けた。その放送が終わっても、まだにわかには信じられなくて、水落は改めて異常な場所にいることを再認識する。
放送の内容を要約すると――人が死んだらしい。しかも一度に二人もだ。水落からすれば、どこの誰なのかも分からなければ顔も分からない。どんな人であるのかさえ知らない赤の他人。けれども、ニュースや新聞などで赤の他人が亡くなったことを知った時のような余裕はなかった。なぜなら、亡くなったのはゲームの参加者だからだ。水落と同じく、このゲームに参加を余儀なくされた人が亡くなったのである。他人事であって他人事ではなかった。
「――想定はできたが、もう犠牲者が出てしまったか」
春日の言葉に水落は頷くことしかできない。亡くなったのは二人とも苗場という姓らしく、もしかすると親族関係にあった可能性がある。ノイズ混じりの放送だったから、しっかりと名前までは聞き取れなかったが、とにもかくにも小学校で、苗場という姓の二人が亡くなったことだけは間違いないようだった。
正直、水落はショックを受けていた。まだ心のどこかで冗談ではないかと思っていた。万が一の可能性であっても、ドッキリかなにかなのではないかと期待していた。目覚めた直後、なんの説明もなしに罠に殺されそうになった水落でさえ、なにかの間違いではないかと、心のどこかで思っていた節があるのだ。まだ罠の恐怖すら知らない参加者にとって、今の放送は重く現実を突きつけたのではないだろうか。
春日のほうへと視線をやると、彼は冷静にSGTを取り出そうとするところだった。
「ルールの通りであれば、亡くなった人の【固有ヒント】がSGTに転送されるはずだ」
事実だけを見据えた春日の言葉には心強さがあったのだが、それと同時に春日が冷酷な人間のようにも見えた。きっと水落の頭の中が少しパニックを起こしつつあったから、そのように見えてしまったのかもしれない。それほどに春日から動揺した様子が伝わってこなかった。
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