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わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】

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 じりじりと教室の外へと向かいつつ、何かを言いたげに比嘉のほうへ視線を向けてくる苗場兄弟。ちょっとばかり強めに睨みつけてやったら、慌てるかのようにしてバタバタと教室から出て行った。

「――さてと」

 胸のつかえが取れたかのようにスッキリとした。やはり他人と一緒にいるより一人のほうがいい。他人という存在は邪魔なだけであるし、他人と関わるということは、必ずルールというものが生まれる。常識やら暗黙の了解やらがそれに当たるだろう。それらに従うことに窮屈さを感じてしまうのだから、やはり他人と自分は少し感覚が違うのだと比嘉は思っていた。

 バタフライナイフを折りたたむと、いつでも取り出せるようにヴィンテージジーンズのポケットに忍ばせた。そしてSGTを取り出す。

 このゲームは【固有ヒント】を可能な限り集め、そのから犯人役――【ブービートラップ】の正体を特定することが目的だ。そして、そのためには他の参加者と接触し、お互いの【固有ヒント】を共有する必要がある。けれども、それをわずか24時間でやれというのは無理な話なのではないかと比嘉は考えていた。街がどれだけの広さなのか分からないし、くわえて街のいたるところに罠が仕掛けられているという状況だ。挙げ句の果てに、他の参加者全員がスタート地点から動かないなんてことはあり得ない。誰もが【固有ヒント】を集めるために動いているだろう。

「やっぱり、俺に【固有ヒント】とやらは不要だなぁ――」

 ぽつりと漏らすとSGTの画面を落とし、こちらはスカジャンのポケットへと突っ込んだ。このゲーム……正攻法で攻略しようとするのであれば、時間も足りなくなるだろうし、罠で命を落とすリスクもかなり高くなる。いわばハードモードのようなもの。もし、このゲームで難易度を選べるとして、イージーモードを選択したって、誰も文句は言えないであろう。そう――明言はされていないが、このゲームをイージーモードにしてしまう手段は用意されている。

「ブービートラップが死亡した場合、強制的にゲームは終了。他のプレイヤーは解放されます――か。ここまで露骨にやってくれるなら、誰かがやらないと駄目だよなぁ」

 比嘉の頭の中には恐ろしい考えがあった。いや、それは普通の思考回路の人からして恐ろしい発想であり、比嘉自身からすれば、しごく真っ当で効率的な手段でしかなかった。

 ――すなわち、このゲームは【ブービートラップ】さえ死んでしまえば強制的に終わらせることができるのだ。
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