BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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プロローグ

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 見知らぬ部屋で目が覚め、そして部屋は子ども部屋。しかも、自分一人だけ。なんだか少し気味が悪くなってきた。おまけに二日酔いだから始末が悪い。ただ、この時に彼が抱いた気味の悪さというものは、決して気のせいなどではなく、彼の本能が潜在的に命の危機を読み取ったものだったのだ。

 ケタケタケタケタ――。耳元で不気味な笑い声を聞いたような気がした。上半身を起こしただけの状態で飛び上がった水落は、いまだに気味の悪い笑い声が聞こえるほうへと視線をやった。そこには、電気の紐にぶら下がっていたピエロのマスコットがいた。

 どんな仕組みになっているのかは分からない。分からないが、まるでネジ巻きの玩具のように両手をばたばたとさせ、その口からは絶えず笑い声らしきものが漏れ出していた。ピエロの駆動音が笑い声に聞こえるだけだと思い込もうとしたが、しかし駄目だった。なぜなら、はっきり喋ったから。親指ほどのサイズしかないマスコット人形らしきピエロが、喋ったのだから。

『トラップ発動。トラップ発動。潰ーブーサレテー死ンジャウヨー』

 最後のほうはメロディーを口ずさむかのように、恐ろしいことを言ってくれるピエロ。その直後、カチン――と音がした。ズンと部屋そのものが揺れたかと思ったら、学習机やらベッドがゆっくりと迫ってくる。いいや、迫って来ているのは学習机でもベッドでもない。壁そのものが迫ってきているのだ。水落が少年の頃に愛読していた漫画誌が音を立て崩れ落ちた。

「なんの冗談だよ、これっ!」

 誰に問うわけでもなく口に出すと、ようやく立ち上がった。頭がズキンと痛んだが、そんなことを気にしている暇はなさそうだ。なんせ、ゆっくりではあるものの、左右の壁が迫りつつあるのだから。このまま動かずにいたらぺしゃんこ。人肉サンドウィッチの完成だ。――ケチャップなら間に合ってる。

 ただ、幸いなことに壁が動く速度自体は遅い。少なくとも、水落が辺りを見回して、どうすれば部屋を脱出できるのかを考える時間くらいはあった。

 ――この部屋には窓がない。しかし、水落の真正面に、ドアノブ付きの扉があった。そこに向かって駆け出そうとした一歩目から、何かに足を引っ掛けて転びそうになった。振り返ると小さなショルダーバッグが転がっている。それを見るや否やピエロのマスコットが気味の悪い声を絞り出した。

『持ッテケェェェェ。ソレ、テメエノダカラ持ッテケェェェェ。持ッテカネェト、後デ泣キベソカクゾォォ』
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