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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 普段は何気なく訪れている母の部屋。母はおっとりとしていて、実にのんびりとした性格である。ただ、コトリの過去を知っていながら、何事もなかったかのように振る舞っていたと思うと、それさえも演技だったのではないかと疑ってしまう。

 部屋の前で立ち止まると、扉をノックする。しばらくすると返事があって、扉がゆっくりと開いた。中からは、コトリをそのまま歳を取らせた姿――と良く形容される母の姿があった。コトリほど派手な格好ではないものの、誰に会ってもいいようにしているのか小綺麗な格好である。

「あら、コトリちゃん。お友達も一緒にどうしたの?」

 普段と変わらぬ様子ではあるが、人生のパートナーを失ってしまったのだ。その声のトーンは低いような気がした。

「お母様。ちょっとだけ聞きたいことがあるの――」

 ここは小細工なしのストレートでいこう。コトリが切り出すと、母は困ったような顔をして「でも、お友達の前で聞いてもいいことなの?」と、コトリ以外の人間がいることを懸念する。別にプライベートなことを聞くわけではないのだが、聞かれる身からすれば分からなくはない。

「私、こういう者です。この度は旦那さんの件、大変だったと聞きました。心情、お察しします」

 すかさず斑目が警察手帳を見せる。あえて警察であることを名乗ってしまった辺り、斑目も小細工なしでぶつかるつもりなのだろう。

 全員が警察関係者というわけではないが、斑目が手を打ったことで牽制となったようだ。母は「こんなところで立ち話もなんだから……」と、コトリ達を部屋の中に招き入れた。

「どうぞ、そこに掛けて。お茶でも出したいのだけど、今は給仕人に暇を出してしまっていて――」

 一応、お茶を淹れるための道具は揃っているようだ。その場でお湯を沸かすことができる電気ケトルが、この部屋には場違いのように思えた。

「あ、良ければ私が淹れます」

 そこで手を挙げたのは千早だった。この場にいて不自然にならないようにするためだろう。早速ソファーに座った鯖洲は見習うべきだ。

「あら、ありがとう。このお屋敷はね、世話を焼いてくれる方がたくさんいるから、お茶のひとつも淹れることができなくなるのよ。コトリちゃんは、それくらいできるようになっていたほうがいいわ」

 中々本題を切り出せずに時間ばかりが過ぎていった。千早がお茶を淹れ、全員がソファーに落ち着いても、本題を切り出すことができない。
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