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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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「なんだかんだで屋敷に戻ることになるとはな。すっかり情報に踊らされたなぁ」

 ハンドルを握る鯖洲は、誰に言うでもなく、しかし皮肉めいたことを口にする。情報に踊らされていなければ、当初の予定では母から話が聞けていたことだろう。ただ、大きく回り道はしてしまったものの、必要な回り道だったと思う。

「ただ、その情報によってもたらされたものもある――そうですよね?」

 冥の問いかけは、斑目に投げかけられたものだったのか、それとも千早にか。いやいや、もしかすると鯖洲なのかもしれない。最有力なのは、窓辺野あかりに対して――という解釈だが。

「えぇ、これは必要不可欠な回り道でしたわね」

 もう逃げない。もう迷わない。もちろん、簡単に受け入れられることではないし、頭の中で消化できるものでもない。ただ、まずは認めなければならないのだ。本能的にそう感じている。自分が窓辺野コトリであり続ける限り、過去との決別はできないだろう。

「そうですか。ちょっとだけ安心しました」

 コトリの言葉を聞いて、冥はただそう呟いた。その言葉もまた、コトリに向けられていたものなのかは分からない。

「とりあえず振り出しに戻るってやつですね。まぁ、改めて状況を整理できますから、逆にいいのかもしれません」

 斑目が言うと、千早が静かに頷いた。情報に踊らされてしまったのかもしれないが、決して千早が悪いわけではない。彼女は彼女なりに、限られた情報から答えを導き出したに過ぎない。

「あのね。もし、過去に起きた事件の真相が、一里之君が聞いた話の通りだったら……私はどうしたらいいと思う?」

 誰かを指定して問うのは迷惑だと考えたコトリは、あえて誰に問うでもない形で切り出した。本当に自分が妹を殺害したのならば、その罪は償うべきなのではないだろうか。このまま知らないふりを続けても構わないのだろうか。

 誰も答えようとしなかった。こんな重たい問題に、無責任に答えられる人間なんていないだろう。しかし、しばらくすると斑目が口を開いた。

「あくまでも法律上の見解ですが、事件の起きた頃はまだ時効という制度が残っていたはずです。調べたわけではないから正確ではありませんが、おそらくはもう時効が成立しているのではないかと思います。そもそも、表向きは事件そのものが起きたことになっていないのですから、罪として問われる要素はないかと。もちろん、どうするのかは窓辺野さん……あなたが決めるべきでしょうが」
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