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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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「……分かりました。何か事情がおありのようで。私の独断になってしまいますが、許可しましょう」

 鯖洲が救急車に乗り込むのを横目で見ながら、救急隊員は小さく頷いた。斑目は「恩に着ます」と頭を小さく下げた。

 斑目が目配せをしてくる。乗れということなのであろう。それに従い、コトリと冥が同乗。そこに斑目と千早まで乗り込むという、大所帯での付き添いとなった。

「用心していたが、まさかあれだけ人目のあるところで仕掛けてくるとはな――。くそ、正直なところ油断してたぜ」

 救急隊員から簡単な手当てを受けながら呟き落とす鯖洲。コトリはとうとう我慢できずに聞くことにした。なんだか、自分が当事者でありながら、蚊帳の外みたいになっているのが気に入らない。

「一体、何が起きているの? さっきの方、間違いなく私のことを狙っていましたわ」

 きっと、救急隊員の前でするべき話ではないのだろう。しかしながら、今は少しでもお互いに情報を共有しておきたい。

「多分だが、お嬢のことを狙ってる連中だよ――。どうやら過去の事件はな、俺達が触れちゃいけない事件だったんだよ。あれがきっかけになって、こんなことになってる。そうだろ?」

 鯖洲はそこで斑目のほうへと視線を移した。どう答えるべきか、明らかに迷った様子の斑目は、ただ浅く頷いたばかりだった。

「正直、私も状況が分かっておりません。なぜ、お嬢様が狙われることになるのですか?」

 冥の疑問に対して、斑目と鯖洲が顔を見合わせる。お互いに牽制し合ったのち、斑目が口を開いた。

「過去の事件について、暴かれると困る方がいるようです。おそらく彼らは雇われたプロでしょうね。いよいよ小説みたいな話になってきましたけど、思っている以上に大きな力が働いているようです」

 なんとも馬鹿げた話なのであろう。普通に考えたら、まず有り得ない話でもある。しかしながら、現実として目の前で起きてしまっている。

「――はぐらかす必要はねぇよ。お嬢にはある程度のことを話してある。いっそのこと、はっきりと伝えてやれ。それは俺よりも刑事のあんたのほうがいいだろうよ」

 救急車は物凄いスピードで走っているのであろう。すぐに病院へと到着してしまいそうだ。いや、それが目的なのだから、当然といえば当然なのであるが。

「そうですか。それなら遠慮なく、今知っていることを全てお話しします。かなりショッキングな内容になると思いますが、心の準備はいいですか?」
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