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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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見知らぬ土地の、さらに見知らぬ住宅街。集落の件数も少なく、家ごとの距離も離れている田舎と違い、ぎっしりと居住区に建ち並ぶ家々の景色は、どこか窮屈にさえ見える。ここの辺りを中心に聞き込みをして回るということか。そして、聞き込みともなれば、本職の出番であろう。
「聞き込みということになれば、やっぱり出番ですかね」
斑目が言うと、鯖洲が「あ? 俺でも聞き込みくらいできるが」と一言。いやいや、玄関先に強面のスキンヘッドがやって来て、誰が対応しようとするだろうか。それに、ごくごく一般人が聞き込みをして回るというのも、中々に気味が悪いというか、人間というものは思っている以上に警戒心の強い生き物だ。こういう時こそ、刑事というブランドが役に立つ。もっとも、こちらの管轄の人間ではないし、勝手に警察の名前を使うわけだから、あまりよろしくはないのだが。
「ここは斑目さんにお願いしたほうがいいかもしれませんわね。可能であれば、私達も同行したいところだけど」
冥と鯖洲のほうに視線をやるコトリ。
「私はこんな格好ですし、彼が一緒にいたら相手を怖がらせてしまうでしょう。私達は商店などを見つけて、その辺りを中心に聞き込みをしてみようかと。お客という立場であれば、店員の方などに話しかける名目もありますし」
鯖洲は強面。冥はメイド姿。この特殊な両名が同行していても、怪しさが増すだけだ。ならばと、別の方向からアプローチをするようだ。各家庭を訪問するのではなく、お店などで店員を捕まえ、当時の話を聞くつもりなのであろう。
「ならば、私と窓辺野さんは、少しだけ斑目さんと距離を置いて、お話だけ聞くようにしましょうか。同行していると不審がられてしまうかもしれないので、隠れながらですが」
千早の提案に「なんだかそれ、わくわくしますわ」と脳天気なコトリ。矢面に立つのは斑目であり、どうやらどこかに隠れつつ会話だけ聞き取ろうというスタンスのようだ。
「だったら、お互いのスマートフォンを通話状態にしておいて、そこから会話を聞き取るのは? こちらはスピーカーにして、相手の会話も拾えるようにしますから」
上手くいくかどうかは分からないが、とりあえず提案してみる。こそこそと隠れながらついてくるのではなく、千早とコトリにはどこかに待機してもらい、スマートフォン越しに聞き込みの内容を聞いてもらうというやり方だ。それならば、彼女達の要望を途中で聞くことができたりと便利だと思う。
「聞き込みということになれば、やっぱり出番ですかね」
斑目が言うと、鯖洲が「あ? 俺でも聞き込みくらいできるが」と一言。いやいや、玄関先に強面のスキンヘッドがやって来て、誰が対応しようとするだろうか。それに、ごくごく一般人が聞き込みをして回るというのも、中々に気味が悪いというか、人間というものは思っている以上に警戒心の強い生き物だ。こういう時こそ、刑事というブランドが役に立つ。もっとも、こちらの管轄の人間ではないし、勝手に警察の名前を使うわけだから、あまりよろしくはないのだが。
「ここは斑目さんにお願いしたほうがいいかもしれませんわね。可能であれば、私達も同行したいところだけど」
冥と鯖洲のほうに視線をやるコトリ。
「私はこんな格好ですし、彼が一緒にいたら相手を怖がらせてしまうでしょう。私達は商店などを見つけて、その辺りを中心に聞き込みをしてみようかと。お客という立場であれば、店員の方などに話しかける名目もありますし」
鯖洲は強面。冥はメイド姿。この特殊な両名が同行していても、怪しさが増すだけだ。ならばと、別の方向からアプローチをするようだ。各家庭を訪問するのではなく、お店などで店員を捕まえ、当時の話を聞くつもりなのであろう。
「ならば、私と窓辺野さんは、少しだけ斑目さんと距離を置いて、お話だけ聞くようにしましょうか。同行していると不審がられてしまうかもしれないので、隠れながらですが」
千早の提案に「なんだかそれ、わくわくしますわ」と脳天気なコトリ。矢面に立つのは斑目であり、どうやらどこかに隠れつつ会話だけ聞き取ろうというスタンスのようだ。
「だったら、お互いのスマートフォンを通話状態にしておいて、そこから会話を聞き取るのは? こちらはスピーカーにして、相手の会話も拾えるようにしますから」
上手くいくかどうかは分からないが、とりあえず提案してみる。こそこそと隠れながらついてくるのではなく、千早とコトリにはどこかに待機してもらい、スマートフォン越しに聞き込みの内容を聞いてもらうというやり方だ。それならば、彼女達の要望を途中で聞くことができたりと便利だと思う。
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