310 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
27
しおりを挟む
「当時、この辺りにどれだけの家が建っていたのかは知らないが、こんなところでよくも堂々と誘拐、監禁なんてことをしやがったなぁ」
辺りを見回しながら鯖洲が呟く。全員がリムジンから降りたところで「ご連絡をいただければ、お迎えに参ります」とコトリに言い残し、運転席へと回ってしまう寺山。場所が場所なだけに、リムジンを路上駐車できるようなスペースはない。きっと、どこか別の場所で待機するつもりなのであろう。
リムジンが走り去るのを見送ると、コトリが小さく溜め息を漏らした。斑目にとっては今日が初対面であるが、コトリにとって寺山はきっと身内同然だろう。そんな身内を疑わなければならないのは辛いに違いない。
「しかし、現場がどこだったのかは非常に分かりやすいですね」
冥はそう言うと、住宅街の一角へと視線をやる。辺りは所狭しと家が立ち並んでいるというのに、その一角だけは不毛の土地となっていた。売土地と書いてある看板が、もう年季が入っていて文字がかすれてしまっている。まるで、何かを避けるかのごとく、そこだけは綺麗に空き地となっていた。
「しかも、ここを売りに出してる会社――窓辺野不動産じゃねぇか。ってことは、ここも会社が所有している土地ってことか?」
かつて廃病院があっただろう土地は、いまだに建物ひとつ立っていない。それどころか土地の所有者は窓辺野不動産ときたものだ。何かしらの因果関係を感じずにはいられない。
「これだけの一等地ならば、例え過去に事件があった場所でも売れてしまいそうなものですがねぇ」
斑目がぽつりと呟くと、そこに合いの手を入れるかのごとく千早が漏らす。
「あえて売らない――という可能性もあり得ますね。この土地には何か第三者に触れて欲しくない何かがある……なんて考えすぎでしょうか?」
現場となったであろう場所は、いまだに窓辺野不動産の持ち物であり、しかも看板の具合から察しても、かなり以前から所有したままのようだ。廃病院を取り壊した後の土地を購入したのか、それとも窓辺野不動産が取り壊し費用まで出したのか。どちらにせよ、これだけの住宅街なのであるから、土地が売れないなんてことはないだろう。すなわち、千早の言う通り、他の理由があって窓辺野不動産の持ち物ということになっているのだろうか。
「とにかく、この辺りのご近所さんに当時のお話を聞いてみたいですわね。行きますわよ」
聞き込みなんて警察の斑目でさえうんざりする仕事なのに、コトリはどこか楽しそうにさえ見える。
辺りを見回しながら鯖洲が呟く。全員がリムジンから降りたところで「ご連絡をいただければ、お迎えに参ります」とコトリに言い残し、運転席へと回ってしまう寺山。場所が場所なだけに、リムジンを路上駐車できるようなスペースはない。きっと、どこか別の場所で待機するつもりなのであろう。
リムジンが走り去るのを見送ると、コトリが小さく溜め息を漏らした。斑目にとっては今日が初対面であるが、コトリにとって寺山はきっと身内同然だろう。そんな身内を疑わなければならないのは辛いに違いない。
「しかし、現場がどこだったのかは非常に分かりやすいですね」
冥はそう言うと、住宅街の一角へと視線をやる。辺りは所狭しと家が立ち並んでいるというのに、その一角だけは不毛の土地となっていた。売土地と書いてある看板が、もう年季が入っていて文字がかすれてしまっている。まるで、何かを避けるかのごとく、そこだけは綺麗に空き地となっていた。
「しかも、ここを売りに出してる会社――窓辺野不動産じゃねぇか。ってことは、ここも会社が所有している土地ってことか?」
かつて廃病院があっただろう土地は、いまだに建物ひとつ立っていない。それどころか土地の所有者は窓辺野不動産ときたものだ。何かしらの因果関係を感じずにはいられない。
「これだけの一等地ならば、例え過去に事件があった場所でも売れてしまいそうなものですがねぇ」
斑目がぽつりと呟くと、そこに合いの手を入れるかのごとく千早が漏らす。
「あえて売らない――という可能性もあり得ますね。この土地には何か第三者に触れて欲しくない何かがある……なんて考えすぎでしょうか?」
現場となったであろう場所は、いまだに窓辺野不動産の持ち物であり、しかも看板の具合から察しても、かなり以前から所有したままのようだ。廃病院を取り壊した後の土地を購入したのか、それとも窓辺野不動産が取り壊し費用まで出したのか。どちらにせよ、これだけの住宅街なのであるから、土地が売れないなんてことはないだろう。すなわち、千早の言う通り、他の理由があって窓辺野不動産の持ち物ということになっているのだろうか。
「とにかく、この辺りのご近所さんに当時のお話を聞いてみたいですわね。行きますわよ」
聞き込みなんて警察の斑目でさえうんざりする仕事なのに、コトリはどこか楽しそうにさえ見える。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる