307 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
24
しおりを挟む
警察はこの時点で、誘拐事件として動いていた。しかしながら、犯人らしき人物からの連絡はなかった。もちろん、身代金の要求もなかったようだ。
「ここがひとつの大きなポイントになると思います。一里之君から話を聞いた時もそうだったけれども、ごくごく自然と誘拐事件扱いされてしまっている。なぜ誘拐事件として扱われることになったのかは分からないけど」
以前、一里之が帰郷した際に聞いた話でも、ここがネックとなっていた。千早はずっとそこが引っかかっていたのであろう。確かに、家出人として処理されてもおかしくはない事件ではある。
「それについては、ちゃんと裏が取れましたよ。今はもう退職されましたが、当時家政婦として屋敷で働いていた方が、事件発生直後におかしな電話を受けていたのです」
さて、ここからは新事実。こちらの警察に協力してもらって得たものになる。事件解決にどれだけ貢献してくれるのかは不明だが、しかしながら新事実として着目すべき点は多い。警察の情報網とて馬鹿にできたものではないということだ。
「おかしな電話?」
コトリは首を大きくかしげる。まるでそんなものはなかったと言いたいかのごとく。
「普段から電話は使用人の連中が対応しているからな。お嬢が覚えてねぇのも無理はねぇな」
使用人を雇うくらいの屋敷だからこその弊害なのであろう。基本的に窓辺野家の人間は電話を取らないようだ。まぁ、家に何人もの家政婦がいるのであれば、そちらに任せっぱなしになってもおかしくはないが。
「――話を続けていいですか?」
一応、話の腰を折られたような形になるため、周囲に確認をする斑目。コトリが小さく頷いた。
「では……。電話がかかってきたのは、長女が失踪してした日の夕方になります。まだ、失踪したとも言えないような早い時間帯だったようですね」
長女のアカリが失踪した当時は高校生。高校生ともなれば、帰りが遅くなることもあるだろう。もちろん、門限などが設けられていなければの話だが。
「おそらく電話の相手は本人だと思われます。電話を受けた家政婦の方も、完全に会話を覚えていたわけではないそうですが、長女の失踪が騒ぎになって、すぐに屋敷の方に伝えたそうです」
そう、事件当日に家政婦が受けていた電話。騒動が明るみに出た時点で家の人間に報告されたがゆえに、すぐさま誘拐事件として警察が動いたようなのだ。また、窓辺野家が資産家であるというのもまた、誘拐を疑う材料にはなったのだろう。
「ここがひとつの大きなポイントになると思います。一里之君から話を聞いた時もそうだったけれども、ごくごく自然と誘拐事件扱いされてしまっている。なぜ誘拐事件として扱われることになったのかは分からないけど」
以前、一里之が帰郷した際に聞いた話でも、ここがネックとなっていた。千早はずっとそこが引っかかっていたのであろう。確かに、家出人として処理されてもおかしくはない事件ではある。
「それについては、ちゃんと裏が取れましたよ。今はもう退職されましたが、当時家政婦として屋敷で働いていた方が、事件発生直後におかしな電話を受けていたのです」
さて、ここからは新事実。こちらの警察に協力してもらって得たものになる。事件解決にどれだけ貢献してくれるのかは不明だが、しかしながら新事実として着目すべき点は多い。警察の情報網とて馬鹿にできたものではないということだ。
「おかしな電話?」
コトリは首を大きくかしげる。まるでそんなものはなかったと言いたいかのごとく。
「普段から電話は使用人の連中が対応しているからな。お嬢が覚えてねぇのも無理はねぇな」
使用人を雇うくらいの屋敷だからこその弊害なのであろう。基本的に窓辺野家の人間は電話を取らないようだ。まぁ、家に何人もの家政婦がいるのであれば、そちらに任せっぱなしになってもおかしくはないが。
「――話を続けていいですか?」
一応、話の腰を折られたような形になるため、周囲に確認をする斑目。コトリが小さく頷いた。
「では……。電話がかかってきたのは、長女が失踪してした日の夕方になります。まだ、失踪したとも言えないような早い時間帯だったようですね」
長女のアカリが失踪した当時は高校生。高校生ともなれば、帰りが遅くなることもあるだろう。もちろん、門限などが設けられていなければの話だが。
「おそらく電話の相手は本人だと思われます。電話を受けた家政婦の方も、完全に会話を覚えていたわけではないそうですが、長女の失踪が騒ぎになって、すぐに屋敷の方に伝えたそうです」
そう、事件当日に家政婦が受けていた電話。騒動が明るみに出た時点で家の人間に報告されたがゆえに、すぐさま誘拐事件として警察が動いたようなのだ。また、窓辺野家が資産家であるというのもまた、誘拐を疑う材料にはなったのだろう。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
回想録
高端麻羽
ミステリー
古き良き時代。
街角のガス灯が霧にけぶる都市の一角、ベィカー街112Bのとある下宿に、稀代の名探偵が住んでいた。
この文書は、その同居人でありパートナーでもあった医師、J・H・ワトスン氏が記した回想録の抜粋である。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる