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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 絶対にあり得ないとは言い切れないが、本当にその営業が犯人なのであろうか。鯖洲の言葉に乗っかって、実際に本人をとっ捕まえるという手段は確実に間違ってはいるが。

 異議を申し立てるのは簡単だった、ただ、コトリと鯖洲のやろうとしていることが間違っているという根拠もない。話を聞いた限りでは、その営業が怪しいのは明らかだ。

 コトリを先頭にして、自然と車のほうに向かうことになる一同。ピッキングやらをしていたため、自然と扉の近くにいた冥が「こちら、元に戻しますか?」とコトリに問う。視覚的にトリックの説明に使われた舞台は、実に中途半端な形で残されている。

「いいえ、そのままでいいですわ。気にせず、こちらにおいでなさい」

 しかし、そんなことはお構いなしに、車のほうへと向かうコトリ。誰も来ないとはいえ、多少なりとも現場を荒らしたまま去るというのは、職業柄なのか気持ち悪かった。

 先に向かっていたコトリと鯖洲であるが、リムジンの脇にしゃがみ込むと、何やらやり取りを始めたようだった。斑目と同様、おそらく現場を荒らしたまま立ち去るのは不本意らしき冥と、そして寺山。それに続いて最後尾という形で戻ることになった斑目。コトリと鯖洲のやり取りを聞くのは、当然ながら最後となった。

「ほら、ご覧なさい。傷ひとつありませんことよ。セバスチャンは運転が乱暴だから、寺山を見習ったほうがよろしくてよ」

 コトリの言葉に反論のひとつでもするだろうと思っていたが、しかし素直にそれを認める鯖洲。なんだか、辺りの空気がおかしい。

「あぁ、本当だなぁ。おい、どうやったらこんなに傷をつけずに走れんだ? 俺の車より車体も長いしよ、どう運転したって側面に傷のひとつくらいついてもおかしくねぇのに。これじゃまるで――全く別の道を走って来たみたいじゃねぇか」

 鯖洲の言葉を聞いて、冥がしゃがみ込んで車の側面を確認する。

「確かに、傷らしきものは全く見当たりませんね。ここに来るまでの道のりは、それこそドライビングテクニック云々以前の問題で、どう走っても傷がつきそうな道なのに」

「でも、実際のところ傷ひとつ残っていないわけだ。なぁ、どうやったんだよ? 教えてくれよ。それともあれか? 他に道があるんじゃねぇかな? 俺達が知らないだけで、もうちょっとマシな道がよ」

 鯖洲の言葉に対しても、寺山は答えない。ただただ黙っているだけだった。そう、明らかに不穏な空気を身にまといながら。
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