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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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当然の指摘に、コトリは小さく笑った。
「それこそが、密室を作り出す肝ですわ。いい? この倉庫は、元から内側からしか鍵がかけられない仕様になっていた。理由はいたって簡単で、素人仕事ゆえに取り付ける方向を間違ってしまったから。本来なら鍵穴のついたドアノブを外のほうに向ける必要があったのだけど、それを内側に向けるように取り付けてしまった。この倉庫の鍵は、倉庫の鍵として成り立っていなかったのよ。でも、よくよく考えたら、それでも充分使えていたのかもしれませんわ」
ずっと神妙ない顔をしていた寺山が、ぽつりと吐き出すように呟いた。
「ここはそもそも人が頻繁に来るような場所ではない。だから、鍵をかける必要もなかった――ということですかね」
もし、ここが都市の中心部であれば、当たり前のように鍵をかける必要があっただろう。キャンプ場に配備されている備品なんてたかが知れているが、盗難に遭う可能性がある。しかしながら、こんな山奥の――しかも、道路さえ整備されていないキャンプ場まで、誰が来るだろうか。存在しているかさえ定かではないキャンプ場において、わざわざ倉庫に鍵をかける必要なんてなかった。誰もやって来ないし、誰も備品なんて盗みはしないからだ。ゆえに、取り付ける方向を間違ってしまっても、そのまま運用できてしまったのだ。
「寺山の言う通り、こんな場所で鍵をかける必要なんてなかったのよ。だから、そのまま運用していた。そして、それをそのまま窓辺野不動産が買い取ったのよ。この扉の取り付けこそが、私達が当たり前に普段から抱いている思い込み。倉庫として使うのであれば、鍵は外側についていて当然――というね」
この思い込みを使って、犯人は密室を作り上げたということか。しかしながら、扉の取り付け方向を間違っていた事実が明らかになったところで、密室の謎が解けたわけではない。いまだに核心には迫れていなかった。
「さて、ここで注目して欲しいのはここですわ。ちょっとおかしいと思いませんこと?」
コトリはそう言うと、扉の外側――本来ならば内側に取り付けられていたはずのドアノブを指差した。ドアノブは台座に取り付けられており、その台座は四隅がネジで止められている。それを見た鯖洲が「あっ 」と声を漏らした。
「これ、もしかして――外から台座を取り外せるんじゃねぇか?」
鯖洲の言葉にコトリは満足気に頷いた。
「それこそが、密室を作り出す肝ですわ。いい? この倉庫は、元から内側からしか鍵がかけられない仕様になっていた。理由はいたって簡単で、素人仕事ゆえに取り付ける方向を間違ってしまったから。本来なら鍵穴のついたドアノブを外のほうに向ける必要があったのだけど、それを内側に向けるように取り付けてしまった。この倉庫の鍵は、倉庫の鍵として成り立っていなかったのよ。でも、よくよく考えたら、それでも充分使えていたのかもしれませんわ」
ずっと神妙ない顔をしていた寺山が、ぽつりと吐き出すように呟いた。
「ここはそもそも人が頻繁に来るような場所ではない。だから、鍵をかける必要もなかった――ということですかね」
もし、ここが都市の中心部であれば、当たり前のように鍵をかける必要があっただろう。キャンプ場に配備されている備品なんてたかが知れているが、盗難に遭う可能性がある。しかしながら、こんな山奥の――しかも、道路さえ整備されていないキャンプ場まで、誰が来るだろうか。存在しているかさえ定かではないキャンプ場において、わざわざ倉庫に鍵をかける必要なんてなかった。誰もやって来ないし、誰も備品なんて盗みはしないからだ。ゆえに、取り付ける方向を間違ってしまっても、そのまま運用できてしまったのだ。
「寺山の言う通り、こんな場所で鍵をかける必要なんてなかったのよ。だから、そのまま運用していた。そして、それをそのまま窓辺野不動産が買い取ったのよ。この扉の取り付けこそが、私達が当たり前に普段から抱いている思い込み。倉庫として使うのであれば、鍵は外側についていて当然――というね」
この思い込みを使って、犯人は密室を作り上げたということか。しかしながら、扉の取り付け方向を間違っていた事実が明らかになったところで、密室の謎が解けたわけではない。いまだに核心には迫れていなかった。
「さて、ここで注目して欲しいのはここですわ。ちょっとおかしいと思いませんこと?」
コトリはそう言うと、扉の外側――本来ならば内側に取り付けられていたはずのドアノブを指差した。ドアノブは台座に取り付けられており、その台座は四隅がネジで止められている。それを見た鯖洲が「あっ 」と声を漏らした。
「これ、もしかして――外から台座を取り外せるんじゃねぇか?」
鯖洲の言葉にコトリは満足気に頷いた。
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