ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

ケース５ 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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「そうしたらね、やっぱりそうだったの。この倉庫は、しっかりした業者にお願いして建てられたものではなくて、町の人間で建てたものだったことが分かったのよ。いわゆる素人仕事ってやつね」

　現場となった倉庫は、しっかりとした業者が建てたものではなく、素人が建てたものだった。言われてみれば、外装もへったくれもない辺り、確かに素人仕事に見える。

「窓がない造りなのも、外装や内装が適当なのも、素人仕事だったからってことか――。それにしちゃ、しっかり電気は通ってるし、大したもんだぜ」

　感心するかのように鯖洲が頷くと、それに冥が口を挟んだ。

「素人仕事とはいえ、三人寄ればなんとやら――です。おそらく、電気工事関係の仕事をしている方が加わっていたのでしょう。それに、まるで何も分からない人間が集まって倉庫を建てるのは難しいですから、多少なりとも建設関係の人間もいたでしょう」

　果たして、どれだけの人数が集まって、この倉庫が建てられたかは分からない。しかしながら、まるで仕事やスキルの異なる大人が集まって作ったのだ。専門分野の人間が混じっていたとしても、全てをフォローすることはできない。だから、窓がない造りになったり、外装が放置されたりしているのであろう。

「えぇ。ただし、専門分野の人間が多少いても、仕事というわけではないから、ずっとつきっきりというわけにもいかない。結果として、この倉庫は窓もなければ外装も残念なことになってしまった。でも、最大の欠陥はね、そこじゃないの――」

　コトリはそう言うと、ドアノブに手をかけて回してみた。

「このドアノブ――元は内側からしか鍵をかけられない仕様になっていたのよ」

　コトリはさぞ言ってやったとばかりの表情を見せるが、残念ながら斑目の頭には疑問符が浮かんだだけだった。いまいちピンと来ないのは、なぜなのか。鯖洲もコトリの言いたいことが分からないのか、首を傾げる。それを見て、コトリは小さく咳払いをすると、改めて言い直した。

「もっと簡単に言ってしまえば、本当なら外からしか鍵をかけることができない仕様の扉をね――まるで反対にして取り付けてしまったのよ」

　欠陥。それは一口に言っても色々な種類があるだろう。しかしながら、この倉庫の欠陥は致命的だ。だが、まだピンと来ない。それは鯖洲とて同じようで、斑目の考えを見事に代弁してくれる。

「いや、でも実際に外からしか鍵がかけられない仕様になってるから、反対にして取り付けたってことにはならねぇだろ？　もし反対に取り付けていたなら、内側からしか鍵がかけられない馬鹿みたいな仕様になっているはずだし」