ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 思い込みによる密室――しかしながら、実際に警察はピッキングによって鍵を開けている。思い込みなんかじゃなくて、実際に鍵がかかっていたのではないか。

「……なんて言い出しても、多分ピンとこないですわね。正確には、ある思い込みを利用して、明らかに不自然なものを隠蔽したと言うべきかしら」

 一同が反応に困っていることは、コトリからも分かったのであろう。わざわざ言い直してくれたのであるが、しかしなおさらに意味が分からない。

「お嬢、いつものことなんだが、俺にも分かるように説明してもらえないだろうか?」

 鯖洲がみんなの考えを代弁してくれる。少しばかりコトリの言葉が飛躍しすぎていて、思考が追いつかない。すると、コトリは大きく背伸びをする。それと同時に冥が「完了しました」と腰を上げた。どうやらピッキングによって解錠できたらしい。

「つまり、普通に考えると、この倉庫には大きな欠陥が元からあったのよ。それはそれは大きな欠陥がね」

 冥が扉を開けると、コトリが先頭となって中へと入る。昼間でも電気を点けないと真っ暗らしい。窓などひとつもないという情報はあらかじめ得てはいたが、ここまで真っ暗だとは。欠陥とは、窓ひとつない構造そのものではないのだろうか。

「その欠陥こそが――これですわ」

 コトリはそう言うと、扉を開け、その内側にあるドアノブを指差した。しかし、そのドアノブはごくごく一般的なドアノブである。確か、中から鍵の開け閉めはできないはずだから、当然ながら鍵穴は見当たらない。

「いや、欠陥って、どこが?」

 鯖洲が一同の代弁に徹する。この何の変哲もないドアノブのどこに欠陥があるのだろうか。

「つまりね、この倉庫は、元々外からしか鍵がかけられない構造だったのではなく、内からしか鍵がかけられない構造だったのよ」

 さらにわけが分からなくなってきた。代弁者であるはずの鯖洲も、どう返していいのか分からないらしく、意見を求めるかのごとく斑目のほうへと視線を向けてくる。こちらに助け舟を求められても困る。

「この倉庫、そもそも窓ひとつない構造というのが気になったの。それで、ちょっと問い合わせたみたのよ。以前、ここを所有していた町の責任者の方にね」

 このキャンプ場は窓辺野不動産が買い上げた場所。資料によると、現場となった倉庫も、キャンプ場とセットで買い上げたものだったはず。しかし、なぜいまさら、以前の持ち主に問い合わせなければならないのだろうか。
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