ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

ケース５ 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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　事件現場となったキャンプ場は、元より窓辺野不動産の持ち物だった。もちろん、ビジネスとして購入したのであろうが、そもそもなぜにキャンプ場を買い取ったのか。コトリはそこに引っ掛かりを覚えているようだった。

「まぁ、この会社は事故物件なんかを喜んで買うような会社だからなぁ。何かしらの理由があったんだとは思うが、ビジネスに全振りしているってこともねぇだろう」

　目の前にいる窓辺野コトリ。彼女の変わった趣味については一里之から聞いている。事故物件に異常な執着を示し、そのために会社を介して事故物件を購入するという。実のところ、とんでもない話である。

「私、あのキャンプ場はね、今回の事件のために購入されたのではないかと思っているの。事件の舞台として相応しい場所を、何者かが選定して購入した――」

　コトリの言葉に冥が頷く。

「担当したのは、確か大東さんでしたよね？　これまでのことを考えると、彼が一枚噛んでいる可能性も、決して低くはないでしょうね」

　大東という人物のことは知らないが、おそらくコトリ達にとって、よろしくない人物という共通認識なのであろう。

「だったら、大東とかいう奴をとっ捕まえて締め上げてみるか？　なんか分かるかもしれねぇぞ」

　さらりと物騒なことを口にしてくれる鯖洲。一応、刑事という立場にある斑目は、それらの暴力的な行為に賛成することはできない。

「いえ、こちらの動きに勘付かれる可能性が高いでしょうから、あえて今は接触しないようにしたほうがいいでしょう。お嬢様も何かを掴みかけているようですし」

　冥の言葉で思い出す。そうだ、コトリはすでに密室の謎を解明しつつある。ここで迂闊に動いて、真犯人を取り逃すようなことがあってはならない。

「――もう一度、現場に行ってみましょうか。ちょっと確かめたいこともありますから」

　これまでは資料だけを頼りに、頭の中でしか事件を展開できていなかった斑目。実際に現場を見ることができるというのは大きい。是非とも同行願いたいところだ。

「またあそこかよ。あそこは車が汚れるから嫌なんだがなぁ――。細かい傷もつくしよぉ」

　すでに車をそこまで走らせたことがあるのだろう。鯖洲が嫌そうにぼやいた。

「修理代や洗車代は、会社に請求しても構いませんから、もう一度だけ車を出していただけない？」

　コトリがそう言うものの、鯖洲はあまり乗り気ではないようだった。どれだけ道が悪いのだろうか。想像できない。