ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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【5】

 不動産屋の家だから、きっとそれなりの豪邸なのであろうとは思っていたが、さらに予想を上回る豪邸だったので、とても驚いた。見ず知らずの土地で、ちゃんと目的地にたどり着けるのか不安だったが、思った以上に目立つ建物であり、その心配は杞憂に終わった。

 留置所で一里之と面会した斑目は、安いビジネスホテルに一泊。今朝からは、事前に連絡を取り合っていた、窓辺野不動産関係者に会うことになっていた。

 呼び鈴を鳴らすことしばらく。失礼のないように早朝の時間は避けたつもりだったが、男が目を擦りながら出てきた。大きな扉があるというのに、隣にぽつんとある勝手口からだ。

「あの、連絡をいただいていた斑目ですが――」

 男は全身スーツ姿。鍛え抜かれた体は、ぱっと見た印象では、どこぞのSPのようだ。もしかすると、ここの娘さんの護衛などをしているのかもしれない。

「あ? いやいや、まだ早ぇだろ。出直してこいよ」

 斑目としては気を遣ったつもりなのであるが、もしかするとこちらの人にとって、午前8時半はまだ早い時間なのかもしれない。田舎と違って、都会の一般的な始業時間は、午前9時くらいだと聞くし。さてさて、彼の言う通り出直すべきか。

「――せっかく遠方から来てくださっているのです。そのように追い返すような真似はやめた方が良いかと」

 ふと、後ろからしたら声に振り返ると、そこにはメイド姿の女性が立っていた。その……濃い。申し訳ないが、先ほどから情報量が多くて困惑してしまう。対応にあたってくれた強面の男も、どこから現れたのか分からないが、気配を消していつの間にか斑目の背後にいた女性も、とてもキャラクターが濃い。こちら側の一里之の知り合いは、こんな人達ばかりなのか。

「なんだよ、玄界灘。お前も随分と早いじゃねぇか」

 男が言うと、メイドの格好をした女性は、手にしていたバスケットバックをかかげた。

「朝食――どうせまだですよね? サンドウィッチなどの簡単なものばかりですが、作って持ってきました。えっと、一応確認させていただきますが、斑目様で間違いありませんね?」

 自然と斑目の脇を通り抜けると、バスケットバッグを男に預けて振り返るメイド。斑目はただただ頷いた。

「左様でございますか。ご朝食のほうは?」

 元より、斑目は朝食を食べない派だった。もちろん食べてなどいないから「いえ」と答える。

「ならば、どうぞご一緒に。そのほうが話もしやすいでしょう」
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