ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

ケース５ 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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「なら、俺はここでゆっくりさせてもらうわ。必要なもんがあれば、今やコンビニでも売ってるしよ」

　男という生き物は、こういう時本当に便利だなと感心することがある。鯖洲は基本的にスーツだから、上着などは数日着回しても苦にならないだろう。下着や靴下にくわえ、今やワイシャツまでもがコンビニに並んでしまう時代だ。必要なものはコンビニで揃えることができてしまう。それゆえ、これだけフットワークが軽いのだ。もちろん、今のコトリにとってはありがたいのであるが。

「やはり、私は一度失礼させていただきます。おそらく、足りないものが諸々出てくると思いますので」

　一方、女はそう簡単にはいかない。ただ泊まるだけであっても、必要なものが男とは違って、明らかに多くなる。ここで彼女を引き留めるわけにはいかないだろう。

「おい、帰りはどうすんだ？」

　ここまで鯖洲の車で動いていたコトリ達。むろん、冥が帰るにしたって鯖洲の車が必要となる。

「幸い、この辺りならばバスの本数に困りませんから。それにタクシーも拾えないわけではありません。なんとかして帰りますので心配はご無用です」

　こんな時だからこそ、コトリとて１人になりたくない。何も起こらないにしても、鯖洲がひとつ屋根の下にいるのといないのとでは、天地ほどの差が出ることだろう。きっと冥は、暗に鯖洲へとメッセージを発しているのだ。いざという時、コトリを守れるように備えておけ――と。

「そうかよ。それじゃ、俺はここでゆっくりさせてもらうぜ。――それはそうと、飯とかはどうすんだ？」

　鯖洲が問うてくる。それに返してやろうと口を開くと同時に、横から「では、これで私は失礼します。明朝、また伺いますゆえ」と冥。

「えぇ、明日もよろしくお願いいたしますわ」

　先にそちらの方へと反応してやると、丁寧に頭を下げた冥が「それでは」と、屋敷を出て行った。

「――食事は、いつもならばシェフが作るのですけど、今回は暇を出してしまっておりますわ。私の分も含めて、どこかで調達してきてくださらない？」

　この屋敷には色々な人が働いており、その人々の働きのおかげで正常に回っている。これまで、それが当たり前だった分、いざそれらがなくなってしまうと、いかに不便なのかが浮き彫りになってしまう。

「面倒くせぇなぁ。まぁ、あれだったら一緒に食いに出るか？　そっちの方が、俺も色々と楽でいい」