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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
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「へぇ、案外しっかりと残るもんだな。で、警察が鍵を開ける前に、それまでにピッキングの痕跡がないことを確認していると」
鍵穴を確認してきたのであろう。鯖洲が言う。果たして、そうも目立つ痕跡が残っているものだろうか。気になったコトリは、鯖洲と入れ違いになる形で外へと向かう。
外に出てドアノブを確認してみる。そこには、格子状の傷がついていた。意識して見ないと分からないかもしれないが、意識すると、これほどはっきりと見える傷もないだろう。
「警察が駆けつけた時点でピッキングの痕跡がなかったということは、少なくともその時点までピッキングをされることはなかったということですわね。となると、ピッキングで鍵をかけるという可能性もゼロになりますわ」
鯖洲の発想は、ミステリとしては御法度ではあったが、現実的に見ると充分にあり得るものだった。結局、その可能性は低いとの答えが出たわけではあるが、鯖洲のような人間の意見もあながち捨てたものではない。
「となると、やはり鍵を使って扉を開け閉めしたことになりますね。しかし、鍵は社長のポケットの中。倉庫には採光窓もないし、出入りするには扉からしかない。なるほど――見事なまでに完全な密室というわけですね」
冥の言う通り、完全なる密室ではある。採光窓などがあれば、そこから出入りするとか、何かしらの足がかりが見つかりそうなものだが、残念ながらその気配もない。一応、しばらくの間、倉庫の中を調べて回ってみたが、残念ながら手がかりは見つからなかった。
「おー、まだ大分余裕があると思ったんだが、もう日が暮れ始めたな。こうなったら暗くなるまで早いぞ」
鯖洲がふと扉の外に視線をやりながら呟く。いくら季節は夏とて、いずれ夜というものはやってくる。道の具合から察するに、そろそろタイムリミットか。
「では、そろそろ参りましょうか」
コトリが言うと、冥が頷いて帰り支度を始める。
「先に車で待っていてください。私は鍵を閉めてから参りますゆえ」
電気を消し、冥と一緒に外へと出る。もう一度だけピッキングの痕跡を確認しようと立ち止まった。
「思ったよりも分かりやすく痕跡が残るのね」
念のためにスマホを取り出して写真を撮る。冥がすでに鍵を閉めるべく、ピッキングツールを差し込むところだった。
「よほどの手練れの方であれば、ある程度の痕跡は消せるらしいのですが、ピッキングの性質上、どうしても痕跡は多少なりとも残ってしまいますね」
しゃがみ込み、指先に全神経を集中させている様子の冥。これ以上、話を展開させることが申し訳ないくらいである。
鍵穴を確認してきたのであろう。鯖洲が言う。果たして、そうも目立つ痕跡が残っているものだろうか。気になったコトリは、鯖洲と入れ違いになる形で外へと向かう。
外に出てドアノブを確認してみる。そこには、格子状の傷がついていた。意識して見ないと分からないかもしれないが、意識すると、これほどはっきりと見える傷もないだろう。
「警察が駆けつけた時点でピッキングの痕跡がなかったということは、少なくともその時点までピッキングをされることはなかったということですわね。となると、ピッキングで鍵をかけるという可能性もゼロになりますわ」
鯖洲の発想は、ミステリとしては御法度ではあったが、現実的に見ると充分にあり得るものだった。結局、その可能性は低いとの答えが出たわけではあるが、鯖洲のような人間の意見もあながち捨てたものではない。
「となると、やはり鍵を使って扉を開け閉めしたことになりますね。しかし、鍵は社長のポケットの中。倉庫には採光窓もないし、出入りするには扉からしかない。なるほど――見事なまでに完全な密室というわけですね」
冥の言う通り、完全なる密室ではある。採光窓などがあれば、そこから出入りするとか、何かしらの足がかりが見つかりそうなものだが、残念ながらその気配もない。一応、しばらくの間、倉庫の中を調べて回ってみたが、残念ながら手がかりは見つからなかった。
「おー、まだ大分余裕があると思ったんだが、もう日が暮れ始めたな。こうなったら暗くなるまで早いぞ」
鯖洲がふと扉の外に視線をやりながら呟く。いくら季節は夏とて、いずれ夜というものはやってくる。道の具合から察するに、そろそろタイムリミットか。
「では、そろそろ参りましょうか」
コトリが言うと、冥が頷いて帰り支度を始める。
「先に車で待っていてください。私は鍵を閉めてから参りますゆえ」
電気を消し、冥と一緒に外へと出る。もう一度だけピッキングの痕跡を確認しようと立ち止まった。
「思ったよりも分かりやすく痕跡が残るのね」
念のためにスマホを取り出して写真を撮る。冥がすでに鍵を閉めるべく、ピッキングツールを差し込むところだった。
「よほどの手練れの方であれば、ある程度の痕跡は消せるらしいのですが、ピッキングの性質上、どうしても痕跡は多少なりとも残ってしまいますね」
しゃがみ込み、指先に全神経を集中させている様子の冥。これ以上、話を展開させることが申し訳ないくらいである。
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