ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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「他にも家の者に動向を知られたくない理由はあるのだけど、それはまた別の機会に話しますわ」

 コトリが家の者に黙って、父親が殺害された事件に首を突っ込む。母からすれば卒倒ものであろう。それにくわえて、家の者に動向を知られたくない理由。まだコトリの中では疑心に過ぎず、大きく捉えるわけにもいかないため、あえて胸の内にしまっておく。

「そう言うことなら仕方がねぇなぁ。ただ、俺の車を玄関の前に回すとさすがに目立つ。ちょっと歩くが、近くのパーキングまで歩いた方がいい。そこに車も停めてあるからよ」

 コトリの家の前には、車が何台でも停められるようなスペースが用意されている。しかしながら、鯖洲がそこを堂々と使ったりはしない。関係性などを使用人に探られたくなかった。

 共通の趣味を持つお友達。それが、使用人へと植え付けた印象である。鯖洲と冥とコトリは共通の趣味を持つお友達であり、それゆえにコトリが家に招くことがある。それでも、普段から滅多に人を招いたりしないから、この設定がどこまで使用人達の間に浸透しているかは不明だ。

「まぁ、そうされたほうが無難でしょうね。少し歩くことになりますが、仕方がありません」

 床の資料を拾い上げ、おそらく必要であろうものを不要であろうものを分別する冥。最低限の情報は、現場まで持って行こうというつもりなのであろう。

「一里之君が逮捕されてしまったから、例のファイルがどこにあるのかも分かりませんね。仕方がありませんから、今回は私が責任を持って管理させていただきます」

 ある程度の資料の分別を終えると、不要となったであろう資料を鯖洲に手渡す。資料は束になってしまい、思ったより重たかったのであろう。鯖洲がややよろけた。

「そちらのほうは現場まで持っていく必要がありません。かといって簡単に破棄していいものでもありませんので、車の中で保管しておいてください」

 冥の言葉を受けた鯖洲は「相変わらず人遣いが荒ぇなぁ」と溜め息。仕方ないといった様子で部屋を出て行った。

「それでは、私達も参りましょう。現状、現場がどのようになっているかは不明ですが、警察が捜査にさえ入っていなければ、辺りを調べることは可能です」

 残ったひとつかみ程度の資料を、持参してきたクリアファイルへと入れ、そのクリアファイルを自分の荷物の中に入れる冥。コトリは普段から常備――というか、持って帰ってきてもそのままにしているバッグを手に取る。出かけるのに必要なものは、一式入っているはずだ。
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