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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
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「そればかりは犯人に聞いてみないと分かりませんね。しかも、事件は誘拐事件において最悪の結末となっていますから」
誘拐事件には、いくつかの解決パターンがある。最良のパターンは、誘拐された人物が無事に戻り、そして身代金を渡すこともなかった場合。身代金を奪われても、誘拐された本人が戻ってくれば、それは御の字だといえるだろう。残りの2パターンはどちらも結果的に同じだと言える。この際、身代金を奪われるか否か、犯人を逮捕できるか否かは別にして――誘拐された人物が殺害されてしまうというパターンだ。
「結果的に身代金の引き渡しの前に、社長は遺体となって発見された。しかも、あの一里之と一緒にだ」
そう、今回のパターンは最悪の結末。誘拐事件が殺人事件になってしまったのだ。けれども、コトリはここに疑問を抱いていた。
「もし仮に、一里之君が社長を誘拐したとして、どうして自ら遺体と一緒に見つかるということをしたのかしら?」
コトリは答えの分かりきっているものを、あえて鯖洲と冥のほうに投げかけた。ただ単に肯定の言葉を待っていただけなのかもしれない。
「あいつがいくら馬鹿でも、自分しか犯人がいないって状況で警察に捕まるなんて馬鹿なことはしねぇだろうよ。素人だって少し考えれば分かるぜ。あの状況で捕まったら明らかに決定打。ワッパかけられても仕方がねぇ」
鯖洲は両手を突き出して、手錠をはめられているようなジェスチャーを見せた。
「まず間違いなく、彼は何者かに嵌められたのだと思います。だからこそ、警察に捕まってしまったわけです」
続いて冥が紡いだ言葉で、コトリは大きく胸をなで下ろす。一里之が犯人だと思えないのは、そう思いたくないというコトリの気持ちが強いだけではない。明らかに違和感があるのだ。
「一里之君と社長が見つかった場所は、中から鍵がかけられた完全な密室だった。鍵はご丁寧にも社長のスーツのポケットの中。ここから犯人はどのようにして外に出たのか。そして、ここまでご丁寧に密室を作り上げたことを前提とすれば、おそらく――」
「最初から誘拐ではなく、殺害が目的だった。殺害が目的でないのであれば、ご丁寧な密室トリックなんて用意する必要がないもの」
冥の言葉を途中で奪うようにして、コトリはそう結論付ける。
「しかし、だとしたら犯人はどんな方法で密室を作り上げたんだ?」
もはや聞き専門となりつつある鯖洲。自分の頭で考えることをやめてしまっているらしい。彼らしいといえば彼らしいが、曲がりなりにも一里之の命運がかかっているのだ。もう少し、しっかりして欲しい。
誘拐事件には、いくつかの解決パターンがある。最良のパターンは、誘拐された人物が無事に戻り、そして身代金を渡すこともなかった場合。身代金を奪われても、誘拐された本人が戻ってくれば、それは御の字だといえるだろう。残りの2パターンはどちらも結果的に同じだと言える。この際、身代金を奪われるか否か、犯人を逮捕できるか否かは別にして――誘拐された人物が殺害されてしまうというパターンだ。
「結果的に身代金の引き渡しの前に、社長は遺体となって発見された。しかも、あの一里之と一緒にだ」
そう、今回のパターンは最悪の結末。誘拐事件が殺人事件になってしまったのだ。けれども、コトリはここに疑問を抱いていた。
「もし仮に、一里之君が社長を誘拐したとして、どうして自ら遺体と一緒に見つかるということをしたのかしら?」
コトリは答えの分かりきっているものを、あえて鯖洲と冥のほうに投げかけた。ただ単に肯定の言葉を待っていただけなのかもしれない。
「あいつがいくら馬鹿でも、自分しか犯人がいないって状況で警察に捕まるなんて馬鹿なことはしねぇだろうよ。素人だって少し考えれば分かるぜ。あの状況で捕まったら明らかに決定打。ワッパかけられても仕方がねぇ」
鯖洲は両手を突き出して、手錠をはめられているようなジェスチャーを見せた。
「まず間違いなく、彼は何者かに嵌められたのだと思います。だからこそ、警察に捕まってしまったわけです」
続いて冥が紡いだ言葉で、コトリは大きく胸をなで下ろす。一里之が犯人だと思えないのは、そう思いたくないというコトリの気持ちが強いだけではない。明らかに違和感があるのだ。
「一里之君と社長が見つかった場所は、中から鍵がかけられた完全な密室だった。鍵はご丁寧にも社長のスーツのポケットの中。ここから犯人はどのようにして外に出たのか。そして、ここまでご丁寧に密室を作り上げたことを前提とすれば、おそらく――」
「最初から誘拐ではなく、殺害が目的だった。殺害が目的でないのであれば、ご丁寧な密室トリックなんて用意する必要がないもの」
冥の言葉を途中で奪うようにして、コトリはそう結論付ける。
「しかし、だとしたら犯人はどんな方法で密室を作り上げたんだ?」
もはや聞き専門となりつつある鯖洲。自分の頭で考えることをやめてしまっているらしい。彼らしいといえば彼らしいが、曲がりなりにも一里之の命運がかかっているのだ。もう少し、しっかりして欲しい。
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