ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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「もちろん。そんなこと、俺は絶対にやりません。ましてや、社長を誘拐する動機もなければ、殺害する理由もありませんから」

 口ではなんとでも言えるし、第三者から見れば、それはあくまでも一里之の主観に過ぎないだろう。しかしながら、これは紛れもない事実である。社長を誘拐する動機はもちろんのこと、殺害する動機もない。

「結構ですわ。ならば、後はこちらに任せなさい。警察が一里之君を勾留できるのには限度がありますわ。このままであれば、警察も証拠の立件は難しいはず。もっとも、妙な力が動かなければ――の話だけれども」

 そもそも一里之が逮捕されたこと自体、すでにおかしい。コトリの言う妙な力の意味は分からないが、何者かに嵌められてしまった気がしてならない。

「せめて、警察に対する直接的な抑止力があればいいのですがね」

 冥がぽつりと漏らした言葉に、一里之は閃いた。いいや、警察に勾留されている時点で、ある人物に頼れないかと考えていたのだった。

「あの、俺の地元の警察署に知り合いの刑事がいます。斑目って人なんですけど、その人に事情を話してもらえれば、力を貸してもらえるかもしれません」

 一里之の言葉を聞いたコトリは「斑目さん――ですわね?」と確認するかのように問うてくる。その横で鯖洲が「警察関係者と知り合いなら、そう最初から言えよなぁ。色々と利用価値が……いや、こっちの話だ」と悪どいことを口にする。人が犯罪者扱いをされているというのに、この小悪党の頭の中はどうなっているのだろうか。

「ならば、こちらで調べて連絡を入れましょう。管轄はまるで違いますが、何かしらの形で手を貸していただけるかもしれません」

 冥は小さく呟いた。鯖洲、コトリ、冥。こうして面会に来てくれた面々が、一里之の冤罪を晴らそうとしてくれている。個々はそれぞれ癖の強い曲者ばかりだが、ここまで心強いことはない。

「それと――つい最近、会社あてに若い女性から連絡があったらしいですわ。直接、こちらに繋げさせたけど、彼女は一里之君の恋人か何か? 随分、あなたのことを心配していたようだけど」

 おそらくだが、千早がすでに手を回してくれていたのであろう。会社を介してコトリにコトンタクトを取ろうとする辺り、千早らしいといえば千早らしい。彼女の悪い予感はどうやら当たってしまったようだが。

「あ、もしかして猫屋敷ですか? あいつは高校時代の同級生で。ちょっと変なやつだけど、でも頭の回転が早くて――」
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