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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】

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 それにしても、留置所というところに入れられるということは、すなわち逮捕されてしまったのと同等なのだろうか。ふと不安になってくる。連日――といっても2日目ではあるが、もう気が滅入ってきているのかもしれない。

 時刻は夕方の4時すぎ。数人で使用するタコ部屋に1人きり。ほとんど会話を交わすこともないのだが、やはり同じ境遇の人間がいるのといないのとでは違う。孤独感に苛まれながら、ただただ時間が過ぎるのを待つばかり。

 きっと、もう少ししたら、他の人達も帰ってきて、冷たい弁当が出されて、それを食べてしばらくしたら寝ることになるのだ。この環境は、まるで罰を受けているようだ。何も悪いことはしていないのに。

 ふと、足音が聞こえてきた。夏だというのに、冷たく薄暗い廊下を歩く足音が。今日もきっと一言も会話を交わしはしないだろうが、同室の人が戻ってきたようだ。しかし、姿を現したのは、警察官だった。

「面会だ。時間は15分。時間厳守するように」

 もし、ここに他の人達もいたら、きっと名前ではなく番号で呼ばれていたことだろう。まだ罪を犯したと決まったわけではなく、下手をすれば冤罪かもしれない人間を番号で呼ぶなんて、もはや人権問題なのではないか。いいや、そうするということは、警察側には明確な確信があるのだ。すなわち、一里之が社長を殺害したという明確な確信が。

 警察官に連れられて牢屋――いいや、部屋を出る。冷たい廊下を歩いて他の部屋に通された。面会ということは、もう両親のところに連絡がいって、慌てて両親が駆けつけてきたのだろう。そう思いつつ部屋に入ると、そこにいた人物達の姿に、思わず涙が出そうになった。

「時間は15分だからな」

 警察官はそう言うと、部屋の隅へと向かい、手を後ろ手に組んで仁王立ちをする。面会室はテレビドラマで観たことがあるのと同様で、真ん中に仕切りがあった。その仕切りのそばにあった椅子に座る。

「――数日パクられたくらいで、しけた面してんなぁ」

 面会の人数には限りがあるのだが、どうやら1対1でなけらばならないという決まりはないらしい。椅子には座らず、立ったまま腕組みをしていたスキンヘッドの男が、人をからかうように笑みさえ浮かべた。相変わらず鯖洲らしいコメントだ。

「ご安心ください。みんな分かっております。あなたが人を殺すような度胸を持ち合わせていないことは――」

 一脚しかない椅子。鯖洲とそれを挟むかのように反対側に立つのは冥だった。そして、椅子に腰をかけているのは……。
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