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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【プロローグ】
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【プロローグ】1
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ふと、目が覚めると見覚えのない場所で焦ることがある。その大抵は、旅行の宿泊先だとか、友人の家だったりと、少し考えれば分かるような場所であることが多い。しかしながら、今回ばかりは本当に見慣れない天井だった。
木目調の丸太を何本も積み重ねたような天井。いいや、屋根と表現したほうが正しいのかもしれない。その光景に見慣れないまま体を起こそうとする。
ずきん――と鈍い痛みが後頭部から足先にかけて駆け巡った。思わず痛みがしたところに手をやって、その手を確認してみる。手のひらは綺麗なまま。どうやら、血は出ていないらしい。そもそも、頭がずきんと痛んだだけなのに、どうしてとっさに血が出ていないかを確認したのか。それはきっと、こうなる直前に残っている記憶が物騒なものだったからであろう。
少しだけ早い夏休みを終えた一里之は、しかしタイミングよく呼び出しがかかるわけもなく開店休業状態。それっぽい言い方をすれば自宅待機という形で仕事に戻った。自宅待機といっても、特にリモートワークをするわけでもなく、普段の休日と変わらない過ごし方をすることがほとんどだ。
いざという時は、何時であっても駆けつけなければならない分、連絡がない時が続く時は続くため、もう少し地元でゆっくりしてきても良かったのではないかと後悔し始めていた頃、食材をきらしてたことに気づいた一里之は、近所まで買い物に出た。基本的にあまり自炊はしないため、買い物といってもコンビニがほとんどだ。その日も必要な分だけ買い物をすると、夜道を歩いていた。
あそこの角を曲がれば自宅が見える――というところに来て、一里之の目の前に火花が散った。ほんの一瞬の出来事であったが、後ろから何かで殴られた感触が残っていた。そこから先は覚えておらず、現在にいたる。
奮発して購入した豪華絢爛のり弁当なる弁当も食べた記憶がない。そう考えたら、急に腹が減ってきた。相変わらず頭は痛んだが、状況を確認すべく辺りを見回した。
やはり見覚えのない景色。広さは四畳半程度だろうか。周りは木材が剥き出しになっている壁に囲まれ、四方の壁の一方には扉がある。窓はひとつもない。
辺りを見回した一里之は、部屋の隅にとんでもないものを見つけて駆け寄った。まるで目を覚ます前の一里之であるかのごとく、もう1人の人間が部屋の隅に倒れていたのだ。うつ伏せになって、両手足をぴんと張った状態でだ。
訳が分からない。それが素直な感想だった。
木目調の丸太を何本も積み重ねたような天井。いいや、屋根と表現したほうが正しいのかもしれない。その光景に見慣れないまま体を起こそうとする。
ずきん――と鈍い痛みが後頭部から足先にかけて駆け巡った。思わず痛みがしたところに手をやって、その手を確認してみる。手のひらは綺麗なまま。どうやら、血は出ていないらしい。そもそも、頭がずきんと痛んだだけなのに、どうしてとっさに血が出ていないかを確認したのか。それはきっと、こうなる直前に残っている記憶が物騒なものだったからであろう。
少しだけ早い夏休みを終えた一里之は、しかしタイミングよく呼び出しがかかるわけもなく開店休業状態。それっぽい言い方をすれば自宅待機という形で仕事に戻った。自宅待機といっても、特にリモートワークをするわけでもなく、普段の休日と変わらない過ごし方をすることがほとんどだ。
いざという時は、何時であっても駆けつけなければならない分、連絡がない時が続く時は続くため、もう少し地元でゆっくりしてきても良かったのではないかと後悔し始めていた頃、食材をきらしてたことに気づいた一里之は、近所まで買い物に出た。基本的にあまり自炊はしないため、買い物といってもコンビニがほとんどだ。その日も必要な分だけ買い物をすると、夜道を歩いていた。
あそこの角を曲がれば自宅が見える――というところに来て、一里之の目の前に火花が散った。ほんの一瞬の出来事であったが、後ろから何かで殴られた感触が残っていた。そこから先は覚えておらず、現在にいたる。
奮発して購入した豪華絢爛のり弁当なる弁当も食べた記憶がない。そう考えたら、急に腹が減ってきた。相変わらず頭は痛んだが、状況を確認すべく辺りを見回した。
やはり見覚えのない景色。広さは四畳半程度だろうか。周りは木材が剥き出しになっている壁に囲まれ、四方の壁の一方には扉がある。窓はひとつもない。
辺りを見回した一里之は、部屋の隅にとんでもないものを見つけて駆け寄った。まるで目を覚ます前の一里之であるかのごとく、もう1人の人間が部屋の隅に倒れていたのだ。うつ伏せになって、両手足をぴんと張った状態でだ。
訳が分からない。それが素直な感想だった。
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