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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】
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折りたたみ式の脚立。そして、おそらく首を吊るのに使用されたであろうロープ。最初の千早の推測では、事件があった地域――すなわち、近場から運び込まれた可能性が高いということになっていた。土地勘がある人間が犯人である可能性も高いことから、自然とそのような推測に落ち着いたのであるが、新情報が出てきたとなれば話は別だ。憶測だけで組み立てられていたところに、確証という名の根拠が組み込まれれば、当然ながら推測が進む先も異なってくるだろう。
「愛の親父さんは、猫屋敷の店の地域出身だった。それに、大人だったら車を持っているだろうし、購入した物品を現場まで運び込むことが可能だった。それに、愛だって相手が親族なら気を許していたはずだ。こいつはいよいよ、愛の親父さんが怪しくなってきたんじゃねぇのか――」
もしかすると、千早はこうなることを見越していたのではないか。きっと、過去の段階ではおぼろげながらも、薄々とこの事実が見えていたのではないだろうか。だから、手を引いたのかもしれない。
「もし本当にそうなら、なんともやりきれない事件ですね。真相が分かったところで、もう疑うべき人間はこの世にいないのですから」
千早は溜め息を漏らしつつも、脚立とロープのほうへと視線をやった。
「一里之君、改めて愛さんの自宅に向かいましょう。早急に確かめるべき点がでてきました。こんなことなら、先ほどお邪魔した時点で聞いておくべきだったのでしょうが」
千早は勢い良く立ち上がる。それにつられて立ち上がった一里之。斑目が千早のことを見てぽつりと一言。
「その様子だと、どうやら何かを掴んだようですね――」
千早の瞳に宿った光のようなものは、以前も何度か見たことがあった。それは決して希望を象徴するような神々しいものではなく、どちらかというと暗き光のように見える。ともかく、それが千早の瞳に宿る時は、事件が解決する前触れだった。高校時代、同じような彼女の目を何度か見ているし、それとセットで事件が解決されていくのを見てきた。すなわち、千早の瞳に宿った黒き光は、事件解決が目前に迫っているサインだった。
「えぇ、しっかりと確認しないと断定はできませんが、おそらく犯人が誰なのか分かりました。それを今から確かめに行くんです」
一里之が逃げ出してしまった事件。誰もが目を背け続けた事件。別のきっかけで帰ってきた地元にて、かつての事件が改めて紐解かんとされていた。
「愛の親父さんは、猫屋敷の店の地域出身だった。それに、大人だったら車を持っているだろうし、購入した物品を現場まで運び込むことが可能だった。それに、愛だって相手が親族なら気を許していたはずだ。こいつはいよいよ、愛の親父さんが怪しくなってきたんじゃねぇのか――」
もしかすると、千早はこうなることを見越していたのではないか。きっと、過去の段階ではおぼろげながらも、薄々とこの事実が見えていたのではないだろうか。だから、手を引いたのかもしれない。
「もし本当にそうなら、なんともやりきれない事件ですね。真相が分かったところで、もう疑うべき人間はこの世にいないのですから」
千早は溜め息を漏らしつつも、脚立とロープのほうへと視線をやった。
「一里之君、改めて愛さんの自宅に向かいましょう。早急に確かめるべき点がでてきました。こんなことなら、先ほどお邪魔した時点で聞いておくべきだったのでしょうが」
千早は勢い良く立ち上がる。それにつられて立ち上がった一里之。斑目が千早のことを見てぽつりと一言。
「その様子だと、どうやら何かを掴んだようですね――」
千早の瞳に宿った光のようなものは、以前も何度か見たことがあった。それは決して希望を象徴するような神々しいものではなく、どちらかというと暗き光のように見える。ともかく、それが千早の瞳に宿る時は、事件が解決する前触れだった。高校時代、同じような彼女の目を何度か見ているし、それとセットで事件が解決されていくのを見てきた。すなわち、千早の瞳に宿った黒き光は、事件解決が目前に迫っているサインだった。
「えぇ、しっかりと確認しないと断定はできませんが、おそらく犯人が誰なのか分かりました。それを今から確かめに行くんです」
一里之が逃げ出してしまった事件。誰もが目を背け続けた事件。別のきっかけで帰ってきた地元にて、かつての事件が改めて紐解かんとされていた。
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