ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

ケース４ ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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　その推測。喜ぶべきなのか、それとも悲しむべきなのか。向き合う覚悟が感覚を鈍くしてしまっており、一里之はどう反応していいのか困ってしまった。愛は自殺ではない。それは一里之がこれまで信じてきたことだった。しかし、第三者に殺されたとなると、それはそれで理不尽に思えてくる。なぜ彼女が殺害されなければならなかったのか。そう考えると腹の底から込み上げてくるものがあった。

「仮に誰かに殺されたとして、一体誰に？　誰が愛を殺したんだ？」

　それはきっと、すぐに答えを出すことはできない問いかけだったのであろう。事実、そうだからこそ、今の今まで真相は闇の中を漂っていたのだから。

「それは今すぐに答えることはできません。ただ、私の考えが正しければ――おそらく、この集落の人間の誰かが犯人だと考えるのが妥当でしょうか」

　話がおかしな方向へと進み始めている。すなわち、愛を殺害したような凶悪な殺人鬼が、千早と同じ集落に住んでいるということなのか。それを承知で、千早はずっとここで店を開いているということになる。

「根拠はいくつかあります。まず、遺体が見つかった氏子様の神社が、ひと目のつかない場所にあったということ。さっきも話しましたけど、そもそもここの神社は地元の人間じゃなければ分からないような場所にあります。当然、その神社を現場に選んだ犯人は、そこがひと目のつかない場所であることを知っていたはず。現場の選定時点で、余所者がやった犯行だとは思えないんです」

　愛はこの集落の人間に殺された。もしそれが本当だとしたら、どうしてそんなことになってしまったのか。大体、この地域で繋がりがあったのは、千早の店くらいなのだ。地域の人と関わったことさえない。強いて挙げるなら、愛を捜索する際に手を貸してくれた消防団の方々くらいだ。

「くわえて、物資の調達について。現場には脚立と首を吊るためのロープが残されていました。これらを用意して神社に運び込むとなると、街まで車で出て、お店で物資を調達し、誰にも気づかれずに神社まで運び込む必要があります。これは斑目さんに聞いた話ですが、その日、近所のお店でロープと脚立を購入したという履歴は見つからなかったそうです。これが何を意味しているか分かりますか？」

　千早の問いかけに、一里之は自然と答えていた。

「調達したのは、お店ではなくて、犯人の自宅から――だった？　それなら車も必要ないだろうし、辺りを警戒していれば、運び込む際にひと目についたりもしない」