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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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「ただ、一里之君からの情報は限られていても、こちらには斑目さんがいますから」

 一里之からの情報量だけでは、おそらく千早は真相にたどり着けないであろう。もちろん、そんな簡単に真相にたどり着けるものだとは思っていないが。

「いや、そう言われても、用意できたのは、そちらのファイルだけですねぇ。誘拐事件として扱われていることに間違いはないみたいですが。確かに、どうしてこれが誘拐扱いになったのか――ちょっと不思議ではありますよね」

 斑目が言うと、改めて彼の用意したファイルをめくりつつ、千早は呟く。それはもう、独り言に近かったのかもしれない。

「――誰かが誘拐ということにしたかったのかも。もしくは、公表されておらず、記録として残ってはいないけど、誘拐だという根拠があったか」

 正直なところ推測の域を出ないだろう。斑目が用意してくれた情報だって、一里之が得た情報を掘り起こした程度のものだった。

「現在も未解決扱いですから、もしかするとデータベースに掲載されている情報も制限されているかもしれない。そればかりは、こちらからはどうにもできないし、警察としてできることにも限りがありますねぇ」

 斑目からの情報をあてにしていた分、なんだか肩透かしをくらったような気がしてしまう。いやいや、問題を持ち込んだ本人が、もっと情報を収集すべきなのかもしれないが、ここまでかき集めた情報が、一里之の現状でのできる限りのことだった。

「当時の関係者の方にお話を聞けたりすれば良いのですが……それも難しいですよね?」

 千早の言葉に、ただただ頷くことしかできなかった。すると、千早はファイルを閉じて「分かりました」と前置きをしてから続けた。

「一旦、こちらは保留とさせていただきます。また、新たな情報などを仕入れることができたら、直接こちらに連絡ください。メールでも構いませんから」

 今や時代は進み、離れていてもある程度のコミニュケーションを取ることが可能だ。やろうと思えば資料をデータにして送ることもできるし、それをもとに千早が推測を進めることも可能である。しかしながら、千早のこれらの行動は、すなわち現状では手の打ちようがないことを意味していた。

「さてさて、それではご両人。本日の夜は何か予定がありますでしょうか? あの頃は高校生でしたから誘えませんでしたが、もしお時間があるなら一杯どうです? もちろん、奢らせてもらいますよ」

 ここに来ることを目的にしていた一里之。つまり、他に用事らしい用事もない。帰ることをあらかじめ連絡しておいた実家にだけ電話しておけば、ありがたく斑目のお誘いに乗ることができるだろう。
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