ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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「事件が起きたのは――今から大分前になりますね。不動産会社の令嬢が家に帰らず、夜になってから両親が警察に届け出た」

 一里之が用意した資料を読み上げつつ、かたわらにあった眼鏡を手に取る千早。高校時代はそんなことはなかったが、大人になってから視力が落ちたのであろうか。多分、眼鏡も似合うのだろうなと思ったが、案の定だった。

「警察は届け出を受理したものの、すぐには動かなかったみたいですね」

「まぁ、世の中には家出人が大勢いるわけですし、失踪した御令嬢も高校生というお年頃です。届け出が夜の時間帯であれば、様子を見るのが普通だと思いますよ。間違っても、捜査員を総動員しての捜索なんかはしません」

 警察には警察なりの事情がある。そのようなニュアンスを含んだ返し方をする斑目。

「そして、すでに廃墟となっていた病院へと、肝試しに訪れた男女グループが遺体を発見した。遺体は見るに耐えない状態だったみたいですが、具体的にはどのような感じになっていたのか分かりますか?」

 その疑問は、まず間違いなく一里之のほうへと向けられていたのであろう。その辺りのことは辛うじて調べ上げていた。もっとも、知らなければ良かったと思うような情報だが。

「あの、猫屋敷――グロいのとか大丈夫だったっけ?」

 念のため確認すると、千早は苦笑いを浮かべつつ「あんまり」と一言。でも、発見された遺体の状況を知りたいのならば、話すしかない。結局、一里之は可能な限りマイルドにして話すことにした。

「発見された遺体は――その、首とか手がちょん切られていたらしい。それが、いたるところに置かれていたみたいだな」

 果たしてマイルドに説明できたのであろうか。顔色ひとつ変えずに「遺体はバラバラにされていたということですか」と漏らす千早を見る限り、別にマイルドな表現にする必要もなかったようだ。

「私から聞くのも変な話ですが、遺体に暴行された後などは――あったのでしょうか?」

 残念なことに、日本でさえも性欲の解消目的で行われる犯罪がある。しかも、足がつかないように、行為の後に被害者を殺害してしまうケースも少なくはない。また、人を殺害するという行為自体に性的な興奮を覚える人種も存在する。つまり、千早はそれが目的で犯人が犯行に及んだのかを知りたいのであろう。

「いや、特にそのような形跡はなかったみたいだな。当時、警察もその線を睨んで調べたみたいだけど」
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