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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【プロローグ】
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道の駅の向かい側にある道へと入って、集落をしらばく走ると郵便局が見えてくる。その郵便局の先に集会所があって、集会所の手前に、その店はあった。駐車場はないため、集会所の前にあるスペースに車を停めさせてもらうのが慣例になっていた。
いざ、集会所に車が停まると、急に緊張してきた。斑目を介して伝えてはもらっているが、直接彼女に一里之が連絡を入れたわけではない。それゆえになおさら緊張してしまうのかもしれない。高校時代は、物静かで大人しい――それでいて美人というイメージの強かった彼女であるが、果たして現在はどうなっているのだろうか。自分の高校時代に比べると、今はかなり成長したという自負がある分、彼女の現在に予測がつかない。
「どうしました? 行きますよ」
先に車を降りた斑目が、キーホルダーを指に引っ掛けて回しつつ、外から問うてくる。はたと我にかえった一里之は、大切に持ってきた資料を手を、大きく深呼吸をしてから車を降りた。
民家はあるものの、誰も外を歩いておらず、また車通りもほとんどない通り。あの時と全く変わっていない。よく、ここにバイクを停め、何の気もなく店に顔を出していたものだ。むしろ、久しぶりというだけで、ここまで緊張している自分に驚く。
「なんも変わってないなぁ」
緊張を誤魔化すかのように辺りを見回しながら呟く。斑目が「こっちは都会と違って、街の風景がコロコロと変わることはないですからね」と返してきた。都会は街の景色がコロコロと変わる。どこぞで工事が始まったかと思えば、いつの間にか終わっていたり、どこかで店が閉まったかと思えば、その直後に別の店舗が入っていたりする。人口が多い分、移り変わりも早くなるのは仕方ないだろうが、それに比べると、高校時代から何ひとつ変わっていない景色というのも、なかなかに貴重なのではないかと思う。
斑目が先頭という形で店へと入る。お香をたいたような良い香りが鼻をくすぐる感じも、あの時と変わっていない。薄暗い店内に、整頓されつつも膨大に陳列された商品は――どれもが曰く付きなのであろう。
「やぁ、千早ちゃん。待ちかねていたようで」
店の奥に向かって斑目が声をかけたことで、そこに人がいたことに気づいた。黒のワンピースを着ていたから気づけなかったのであろう。長い髪は高校時代と同じように後ろでまとめてあり、ふと上げたその顔は白く透き通っていた。
「一里之君、久しぶりですね――」
一里之と目が会うと、この店の店主である猫屋敷千早は、うっすらと笑みを浮かべたのであった。
いざ、集会所に車が停まると、急に緊張してきた。斑目を介して伝えてはもらっているが、直接彼女に一里之が連絡を入れたわけではない。それゆえになおさら緊張してしまうのかもしれない。高校時代は、物静かで大人しい――それでいて美人というイメージの強かった彼女であるが、果たして現在はどうなっているのだろうか。自分の高校時代に比べると、今はかなり成長したという自負がある分、彼女の現在に予測がつかない。
「どうしました? 行きますよ」
先に車を降りた斑目が、キーホルダーを指に引っ掛けて回しつつ、外から問うてくる。はたと我にかえった一里之は、大切に持ってきた資料を手を、大きく深呼吸をしてから車を降りた。
民家はあるものの、誰も外を歩いておらず、また車通りもほとんどない通り。あの時と全く変わっていない。よく、ここにバイクを停め、何の気もなく店に顔を出していたものだ。むしろ、久しぶりというだけで、ここまで緊張している自分に驚く。
「なんも変わってないなぁ」
緊張を誤魔化すかのように辺りを見回しながら呟く。斑目が「こっちは都会と違って、街の風景がコロコロと変わることはないですからね」と返してきた。都会は街の景色がコロコロと変わる。どこぞで工事が始まったかと思えば、いつの間にか終わっていたり、どこかで店が閉まったかと思えば、その直後に別の店舗が入っていたりする。人口が多い分、移り変わりも早くなるのは仕方ないだろうが、それに比べると、高校時代から何ひとつ変わっていない景色というのも、なかなかに貴重なのではないかと思う。
斑目が先頭という形で店へと入る。お香をたいたような良い香りが鼻をくすぐる感じも、あの時と変わっていない。薄暗い店内に、整頓されつつも膨大に陳列された商品は――どれもが曰く付きなのであろう。
「やぁ、千早ちゃん。待ちかねていたようで」
店の奥に向かって斑目が声をかけたことで、そこに人がいたことに気づいた。黒のワンピースを着ていたから気づけなかったのであろう。長い髪は高校時代と同じように後ろでまとめてあり、ふと上げたその顔は白く透き通っていた。
「一里之君、久しぶりですね――」
一里之と目が会うと、この店の店主である猫屋敷千早は、うっすらと笑みを浮かべたのであった。
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