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ケース3 山奥の事故物件【出題編】
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効率が悪いというか、普段料理をするところで木材なんて茹でたら、そりゃ奥さんに怒られるのではないだろうか。とにもかくにも、コトリの洞察力と知識には驚かされる。無知な自分が恥ずかしくなるばかりだ。
「さて、後――気になることと言えば」
コトリはそう言いながら寺山のほうへと視線をやり「さっきの薪割り小屋の閂……受け止める金具を調べて欲しいですわ。特に、金具と金具の距離なんかを知りたいですわね」と指示を飛ばす。ここにいる以上、寺山の扱いは一里之達と同じなのであろう。やや戸惑った様子の寺山は、返事をすると作業場を後にした。残ったのは一里之とコトリだけ。
もうすでに、彼女は何かを掴んでいるのだろうか――。一里之の視線に気づいたコトリが、まるで一里之に問いかけるかのように口を開いた。
「事件当時、普段は掃除なんてされていないはずの万力付近の床が、なぜか綺麗になっていた。これが何を意味するか……」
自分自身への問いかけのようにも聞こえたし、一里之に間接的に問うているようにも聞こえたコトリの言葉。不意に訪れた沈黙が嫌で、一里之は口を開く。
「そりゃ、掃除をしたくなるくらい汚くなったんじゃないですかね?」
万力付近の床が綺麗だったこと――それが事件にどう繋がるかは分からないが、一般論的に掃除をする理由はそれくらいしかないだろう。しかし、コトリは静かに目を閉じると首を横に振った。
「普段から掃除をする方であれば、わざわざ証言として残ってはいないですわ。きっと、実に珍しい事象だからこそ印象として残り、その証言が残されたのだと思われます。なぜ、万力付近の床が綺麗に掃除されていたのか。そして、そもそも掃除をしたのは誰なのか――どうやら、うっすらと見えてきたみたいですわね」
コトリは満足そうに何度も頷いた。もう、今回の事件の全貌が見えてきているというのか。密室となった薪割り小屋の中で殺害されていたオーナー。誰がどうやって殺害し、どうやって密室を作り上げたのか。一里之にはさっぱり分からない。それと綺麗に掃除された床が、どう繋がるのだろうか。
「あー、おかげさんで埃まみれだぜ。まぁ、案外簡単に見つかってくれてありがたいけどよ」
鯖洲が戻ってくる。その手には大きな鍋があった。鯖洲が抱えるように持っているアルミ製だと思わしき鍋。それは一里之の想像を遥かに越えて大きかった。
「さて、後――気になることと言えば」
コトリはそう言いながら寺山のほうへと視線をやり「さっきの薪割り小屋の閂……受け止める金具を調べて欲しいですわ。特に、金具と金具の距離なんかを知りたいですわね」と指示を飛ばす。ここにいる以上、寺山の扱いは一里之達と同じなのであろう。やや戸惑った様子の寺山は、返事をすると作業場を後にした。残ったのは一里之とコトリだけ。
もうすでに、彼女は何かを掴んでいるのだろうか――。一里之の視線に気づいたコトリが、まるで一里之に問いかけるかのように口を開いた。
「事件当時、普段は掃除なんてされていないはずの万力付近の床が、なぜか綺麗になっていた。これが何を意味するか……」
自分自身への問いかけのようにも聞こえたし、一里之に間接的に問うているようにも聞こえたコトリの言葉。不意に訪れた沈黙が嫌で、一里之は口を開く。
「そりゃ、掃除をしたくなるくらい汚くなったんじゃないですかね?」
万力付近の床が綺麗だったこと――それが事件にどう繋がるかは分からないが、一般論的に掃除をする理由はそれくらいしかないだろう。しかし、コトリは静かに目を閉じると首を横に振った。
「普段から掃除をする方であれば、わざわざ証言として残ってはいないですわ。きっと、実に珍しい事象だからこそ印象として残り、その証言が残されたのだと思われます。なぜ、万力付近の床が綺麗に掃除されていたのか。そして、そもそも掃除をしたのは誰なのか――どうやら、うっすらと見えてきたみたいですわね」
コトリは満足そうに何度も頷いた。もう、今回の事件の全貌が見えてきているというのか。密室となった薪割り小屋の中で殺害されていたオーナー。誰がどうやって殺害し、どうやって密室を作り上げたのか。一里之にはさっぱり分からない。それと綺麗に掃除された床が、どう繋がるのだろうか。
「あー、おかげさんで埃まみれだぜ。まぁ、案外簡単に見つかってくれてありがたいけどよ」
鯖洲が戻ってくる。その手には大きな鍋があった。鯖洲が抱えるように持っているアルミ製だと思わしき鍋。それは一里之の想像を遥かに越えて大きかった。
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