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ケース3 山奥の事故物件【出題編】
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「中の保存状態はそこまで悪くありませんでした。特に2階部分の客室なんて手入れが行き届いてましたので、布団などをしっかり干せば、そのまま使えそうです」
先に中を掃除していた冥が言う。しかしながら、外は生憎の空模様だ。布団を干すわけにはいかないだろう。それに加えて、電気も通っていないのだ。真っ暗な個室があっても、あまり嬉しくはない。まぁ、個室がある――ということは、本来ならば喜ぶべきことではあるが。
「お嬢のお供をしてると、プライベートもへったくれもねぇからなぁ。個室があるのはありがたいねぇ」
鯖洲が何を考えているのか一発で見抜いたのであろう。冥が先回りをする。
「ただ、個室であろうとも勝手に喫煙することはできませんから。それに、明かりも確保しなければなりませんから、個室を使うのはいささか効率が悪いかと」
意図を見抜かれてしまったであろう鯖洲は、分かりやすく舌打ちをする。そんな光景を見ていた寺山が、恐る恐るといった様子で手を挙げた。
「その、それはお嬢様も例外ではないのだろうか? お分かりだろうが、お嬢様もお年頃。そんな大事な時期に――この方々とずっと同じ空間にいるのはどうかと」
この方々――とは、間違いなく鯖洲と一里之のことを指しているのであろう。すでに臨戦態勢に入っていた鯖洲がすかさず返す。
「大事な時期に、運転手だか執事だかに尻を追い回されるのも、俺はどうかと思うがなぁ。お前もそう思うだろ?」
話を振られても困る。ひとつ屋根の下、年頃だというお嬢様が、どこの馬の骨かも分からぬ男達と一緒に過ごす。寺山はそれが不健全であると言いたいのだろう。その気持ちはまるで分からないわけではない。しかし、鯖洲のように寺山のことを揶揄するようなことを言うのも違う気がする。
「そ、それはそうと――俺、色々調達してきてるんです。それこそ、ランタンとかも。暗くなる前に明かりを先に確保しておいたほうがいいですよね」
あえて鯖洲の意見には乗っからずに、降ろしたリュックに手を伸ばすことでごまかした。鯖洲と寺山の仲が悪いことは分かったが、それに巻き込まないで欲しい。
一里之の言葉を待っていたかのごとく、外が明かるく光り、そしてしばらくしてから地を這うような轟音が山荘を包み込んだ。雨だけでは雷もともない始めたらしい。雨は止む気配などなく、強くなる一方だ。屋根の当たる雨音のコントラストは、いきなりクライマックスを迎えたようだ。
先に中を掃除していた冥が言う。しかしながら、外は生憎の空模様だ。布団を干すわけにはいかないだろう。それに加えて、電気も通っていないのだ。真っ暗な個室があっても、あまり嬉しくはない。まぁ、個室がある――ということは、本来ならば喜ぶべきことではあるが。
「お嬢のお供をしてると、プライベートもへったくれもねぇからなぁ。個室があるのはありがたいねぇ」
鯖洲が何を考えているのか一発で見抜いたのであろう。冥が先回りをする。
「ただ、個室であろうとも勝手に喫煙することはできませんから。それに、明かりも確保しなければなりませんから、個室を使うのはいささか効率が悪いかと」
意図を見抜かれてしまったであろう鯖洲は、分かりやすく舌打ちをする。そんな光景を見ていた寺山が、恐る恐るといった様子で手を挙げた。
「その、それはお嬢様も例外ではないのだろうか? お分かりだろうが、お嬢様もお年頃。そんな大事な時期に――この方々とずっと同じ空間にいるのはどうかと」
この方々――とは、間違いなく鯖洲と一里之のことを指しているのであろう。すでに臨戦態勢に入っていた鯖洲がすかさず返す。
「大事な時期に、運転手だか執事だかに尻を追い回されるのも、俺はどうかと思うがなぁ。お前もそう思うだろ?」
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「そ、それはそうと――俺、色々調達してきてるんです。それこそ、ランタンとかも。暗くなる前に明かりを先に確保しておいたほうがいいですよね」
あえて鯖洲の意見には乗っからずに、降ろしたリュックに手を伸ばすことでごまかした。鯖洲と寺山の仲が悪いことは分かったが、それに巻き込まないで欲しい。
一里之の言葉を待っていたかのごとく、外が明かるく光り、そしてしばらくしてから地を這うような轟音が山荘を包み込んだ。雨だけでは雷もともない始めたらしい。雨は止む気配などなく、強くなる一方だ。屋根の当たる雨音のコントラストは、いきなりクライマックスを迎えたようだ。
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