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ケース3 山奥の事故物件【出題編】
ケース3 山奥の事故物件【出題編】1
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【1】
5年前。某県の山中にある隠れ家的ペンション――コルレットは、いつも通りの朝を迎えていた。
夫が脱サラして宿泊施設の経営をやりたいと言い出したのが、おおよそで10年前のことか。山奥にあって、徒歩でなければたどり着けないような僻地にて、隠れ家的なペンションをやりたい。そんなことを言い出した当時、彼女――妻である安座間優子は大反対をした。
子どもは欲しかったが、夫との間には授からなかった。子どもに対する責任感のようなものが芽生えていれば、きっと無茶なことを言い出したりもしなかったのであろう。もっとも、夫の性格ならば、子どもがいても安定した暮らしより挑戦的な暮らしを選んだのかもしれないが。
散々反対はしたものの、最終的には夫の熱意に負けて優子のほうが折れた。登山が趣味の資産家が所有していたという別荘を安く買い受け、そして隠れ家の経営が始まった。
夫は手先が器用であり、買い受けた別荘の手入れはもちろん自分でしていたし、廃材などをもらい受けて、別荘の隣に薪割り小屋なんてものを建ててしまった。いくらDIYが流行っているといっても、さすがに自分で小屋まで建てるのはやりすぎではないかと思った。素人が知識のないまま手を出して、何かがあったら大変だと優子は危惧していた。
なによりも物資の調達が大変だった。宿泊施設なのだから、当然ながら食事を出さねばならない。しかし、車で運び込むことはできず、調達手段は最終的に徒歩となる。客が来るかも分からない場所で始めた山荘経営は、色々と前途多難だった。
最初こそ閑古鳥が鳴いていたが、しかし口コミが口コミを呼び、次第に客が集まり始めた。山中にあり、徒歩でなければ向かうことができないという環境がウケたのか、登山を趣味とする客が集まり始めたのだ。
いつしか、夫の経営するペンションであるコルレットは、雑誌の片隅に掲載されるほどの有名店となっていた。客室には限りがあるから、客の数にも限界があったのだが、アルバイトを雇わなければならないほどまでになっていた。
普段は夫婦やカップル、仲間同士などで宿泊されるお客が多いのであるが、しかしその日は珍しく、単独での宿泊客が3人泊まっていた。ペンション側の人間は、夫と優子、そしてシーズンになると泊まり込みで働いてくれるアルバイトの磯崎誠の3人。朝食を済ませてチェックアウトしてもらえば、ひと段落つくという朝だった。
5年前。某県の山中にある隠れ家的ペンション――コルレットは、いつも通りの朝を迎えていた。
夫が脱サラして宿泊施設の経営をやりたいと言い出したのが、おおよそで10年前のことか。山奥にあって、徒歩でなければたどり着けないような僻地にて、隠れ家的なペンションをやりたい。そんなことを言い出した当時、彼女――妻である安座間優子は大反対をした。
子どもは欲しかったが、夫との間には授からなかった。子どもに対する責任感のようなものが芽生えていれば、きっと無茶なことを言い出したりもしなかったのであろう。もっとも、夫の性格ならば、子どもがいても安定した暮らしより挑戦的な暮らしを選んだのかもしれないが。
散々反対はしたものの、最終的には夫の熱意に負けて優子のほうが折れた。登山が趣味の資産家が所有していたという別荘を安く買い受け、そして隠れ家の経営が始まった。
夫は手先が器用であり、買い受けた別荘の手入れはもちろん自分でしていたし、廃材などをもらい受けて、別荘の隣に薪割り小屋なんてものを建ててしまった。いくらDIYが流行っているといっても、さすがに自分で小屋まで建てるのはやりすぎではないかと思った。素人が知識のないまま手を出して、何かがあったら大変だと優子は危惧していた。
なによりも物資の調達が大変だった。宿泊施設なのだから、当然ながら食事を出さねばならない。しかし、車で運び込むことはできず、調達手段は最終的に徒歩となる。客が来るかも分からない場所で始めた山荘経営は、色々と前途多難だった。
最初こそ閑古鳥が鳴いていたが、しかし口コミが口コミを呼び、次第に客が集まり始めた。山中にあり、徒歩でなければ向かうことができないという環境がウケたのか、登山を趣味とする客が集まり始めたのだ。
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