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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【エピローグ】
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事故物件に異常なほどの執着をし、気に入った物件があれば、そこに住もうとさえする。この行為を親である社長は黙認している。それどころか、彼女の願望を叶えるために会社を利用し、そして社員まで彼女の元に派遣しているのだ。詳しいことは知らないが、会社を私的な理由で動かしてもいいのだろうか。
コトリ自身は一言も口にはしないが、彼女にはかつて姉が存在していた。その姉は事件に巻き込まれてしまい、当時から心霊スポットとして有名だった医院の中で、変わり果てた姿となって見つかった。
――もしかして、コトリは姉が殺害された物件を探しているのだろうか。例えば、詳しい事情を親からシャットダウンされてしまい、姉がどこで殺害されたかなども知らないとか。いいや、こうしてネットを少し調べれば情報が出てくるのだ。それはないだろう。それに、もしそうであれば、事故物件は廃医院に絞られるだろう。それならば、数もそう多くはないはずだ。
一里之は何度目か分からぬ溜め息を漏らすと、そっと席を立った。何かが分かるかもしれないと思って、そして社会の中にいる自分を確認するためにも図書館までやってきたわけだが、どうやら収穫はなかったようだ。むしろ、散歩をする幼稚園児達を見て、自分が社会から孤立しているような錯覚に陥ってしまった。こういうのを骨折れ損のくたびれ儲けという。
一里之は図書館を後にすると、スマホを取り出す。当たり前だが、大東にはあれから連絡などしていない。ずっと犬猿の仲であるし、連絡を取りたいとも思わないが、しかし――大東が本当に人を殺したのか問い詰めたい気持ちもあった。
正義感が昔から強いわけではないし、他人の悪事は絶対に許さない――という性格でもない。けれども、大東が人を殺している可能性がある以上、そのまま罪を償わずに生きていくのはどうかと思う。もっとも、だからといって一里之に何かができるわけではない。仮に自首を進めるにしたって、大東を犯人だとする物的証拠はないし、根拠も弱い。
一体、後どれくらいこんな日が続くのだろうか。もしかすると、窓際族というやつで、事実上の左遷なのではないか。わけの分からない仕事をやらせて、退職に追い込もうとしているだけなのではないか。
平日の街並みはいつも通り慌ただしかった。そう――ただ一里之を除いて。
【ケース2 ―完―】
コトリ自身は一言も口にはしないが、彼女にはかつて姉が存在していた。その姉は事件に巻き込まれてしまい、当時から心霊スポットとして有名だった医院の中で、変わり果てた姿となって見つかった。
――もしかして、コトリは姉が殺害された物件を探しているのだろうか。例えば、詳しい事情を親からシャットダウンされてしまい、姉がどこで殺害されたかなども知らないとか。いいや、こうしてネットを少し調べれば情報が出てくるのだ。それはないだろう。それに、もしそうであれば、事故物件は廃医院に絞られるだろう。それならば、数もそう多くはないはずだ。
一里之は何度目か分からぬ溜め息を漏らすと、そっと席を立った。何かが分かるかもしれないと思って、そして社会の中にいる自分を確認するためにも図書館までやってきたわけだが、どうやら収穫はなかったようだ。むしろ、散歩をする幼稚園児達を見て、自分が社会から孤立しているような錯覚に陥ってしまった。こういうのを骨折れ損のくたびれ儲けという。
一里之は図書館を後にすると、スマホを取り出す。当たり前だが、大東にはあれから連絡などしていない。ずっと犬猿の仲であるし、連絡を取りたいとも思わないが、しかし――大東が本当に人を殺したのか問い詰めたい気持ちもあった。
正義感が昔から強いわけではないし、他人の悪事は絶対に許さない――という性格でもない。けれども、大東が人を殺している可能性がある以上、そのまま罪を償わずに生きていくのはどうかと思う。もっとも、だからといって一里之に何かができるわけではない。仮に自首を進めるにしたって、大東を犯人だとする物的証拠はないし、根拠も弱い。
一体、後どれくらいこんな日が続くのだろうか。もしかすると、窓際族というやつで、事実上の左遷なのではないか。わけの分からない仕事をやらせて、退職に追い込もうとしているだけなのではないか。
平日の街並みはいつも通り慌ただしかった。そう――ただ一里之を除いて。
【ケース2 ―完―】
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