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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【エピローグ】

ケース2 干しかんぴょう殺人事件【エピローグ】1

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 その行為は、彼女の触れてはいけない部分に触れてしまいそうで怖かった。けれども、そうせずにはいられない――そうさせる衝動性のようなものを含んでいたことは間違いない。

 基本的に会社に居場所のない一里之。それこそ、コトリの相手をしなければならない時以外は、基本的にオフと同じような扱いになってしまうゆえ、だから少し足を伸ばして図書館に来てみよう――なんて思い立ったのかもしれない。

 平日の図書館というものは、想像していた以上に静かだった。いや、図書館が騒がしいというのも変な話だから、人がほとんどいないと表現すべきか。

 今や家でも簡単にネットに繋がる時代。わざわざ一里之も家から出ずとも、スマホひとつで色々と調べることができてしまうのだが、それでも一里之が図書館まで出向いたのは、平日なのに家に引きこもっているという負い目があったからなのかもしれない。実働時間に関係なく、給料は変わらないのだが、やはりずっと家にいるというのは気が滅入るものがあった。

 まずは手始めに、例の事件――干しかんぴょう殺人事件のことを調べてみる。しかし、表向きは事件として扱われていない。事故の可能性もあるとの記事は見つかったものの、第三者による殺人であると記載している記事は見つからなかった。

 あの事件は過去の事件。今さら新事実が見つかったところで、こちらからアプローチでもしない限り、過去の改ざんは行われないのだろう。

 一里之は例の事件が第三者によるものだという可能性を垣間見てしまった。しかも、その第三者が顔見知りという最悪な状況だ。けれども、一里之には何もできない。せいぜい、こうして過去の事件を調べて溜め息を漏らすことくらいだ。

 ほとんど人のいない図書館。静寂が耳に痛く、少しばかり日常の喧騒に紛れたくなった一里之は、2階のバルコニーにある喫煙ブースに向かった。屋内で煙草を吸うのはしのびないから、わざわざ外に出るというのに、今の世の中は屋外で煙草を吸うことさえ肩身が狭い。わざわざ屋外に喫煙ブースなどという屋内を作り出し、そこに喫煙者を押し込めるのだから。

 喫煙所にも一里之しかおらず、随分と寂しいものだった。もっとも、図書館に面した道路を走る車の音が、いささか孤独感を緩和してくれたが。
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