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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【解決編】

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 実際にコトリがやってみると、やはり支えるべき重さがないからなのか、中々に干しかんぴょうは切れなかった。いいや、そもそも干しかんぴょうの水戻しには、どれくらいの時間がかかるか分からない。

「お嬢様、それならば確かに、その場にいなくとも被害者が首を吊ることになるでしょう。しかし――いくら編み込んだ干しかんぴょうだとしても、せいぜい水につけて30分もすれば柔らかくなってしまいます。その辺りの調整はどうしたのでしょう?」

 一里之とは違い、かんぴょうの性質を知っている様子の冥。彼女の質問に、コトリはシャワーノズルのホルダーを見上げる。

「直接、干しかんぴょうにかからないようにすれば時間は稼げますわ。干しかんぴょうにかからないようにシャワーを出す。そうすれば、水蒸気が干しかんぴょうを水戻しすることになりますわね。こうして時間を稼ぎ、可能な限り時間が経過してから、かんぴょうのロープが切れるように調整したのではないかしら?」

 コトリの言葉に鯖洲は大きな溜め息を漏らした。

「実際に当時の現場を調べたわけじゃねぇから、なんとも言えねぇなぁ。まぁ、どれだけ干しかんぴょうを頑丈に編んでいたかも不明だし、実際に干しかんぴょうが水で戻されても、すぐにロープが切れたわけじゃねぇだろうし」

 この辺りのことは、今さら調べ直すわけにはいかないため、実際はどうだったかは分からない。過去に起きたことを掘り起こすのだから仕方がないのかもしれないが、コトリの推測は正直、どうとでも言えるようなものだった。そうだったのかもしれないし、そうではなかったのかもしれない。

 一里之がどうにも腑に落ちないのは、かつての高校時代の友人に、このような事件をロジカルに解決する人物が存在したからであろう。もう随分と連絡を取っていない。元気なのだろうか。

「では、そのようなトリックで被害者が殺害されたとして、犯人は一体誰なのでしょうか?」

 犯人については、ロジックなしの想像というわけにはいかない。それなりの根拠というものが必要になってくるだろう。果たして、コトリはその根拠をしっかりと用意しているのであろうか。

「ある人物が知りもしないはずの情報を口にしていますわ。その人物こそが犯人だと、わたくしは思ってますわね」

 その人物とは誰なのか。コトリの言い方のニュアンスから、すでに見当はついていた。しかし、受け入れたくはなかった。
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