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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【解決編】

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 頭部に打撲痕、もしくは被害者の体内に睡眠薬のようなものが残っていた可能性がある。コトリの言葉から察するに、こういうことだろうか。つまり――。

「あの、よく分からないですけど、被害者は一度気を失っていた時間があるってことですか?」

 頭部の打撲痕。そして、睡眠薬。これらのワードがコトリの口から出てきたのは、おそらく被害者に意識のない時間帯があったと考えているからであろう。

「――そうですわね。まず間違いなく、被害者は犯人の手によって意識を失っていた時間があったはずですわ」

 一里之の推測は正解らしい。袴田の奥さん――いいや、この際もう被害者と統一してしまったほうがいい。被害者は日中に訪れた3人のいずれかに、何かしらのアプローチで意識を奪われたというのか。しかし、それだけでは日中に訪れた3人のいずれかが、死亡推定時刻前後に被害者を殺害した証明にはならないだろう。

「しかし、意識を奪った――ここはもう犯人と呼んでしまいますか。犯人はどうやって死亡推定時刻に殺害に及べたのでしょうか? あくまでも犯人が家を訪れたのは日中なのですよね?」

 一里之の考えを代弁してくれた冥。それに対してコトリは「論より証拠と言うでしょう? セバスチャンが帰ってくるのを待ちましょう」と、2杯目のお茶に手をつけた。

 どれくらい待っただろうか。場繋ぎの意味も込め、一里之も2杯目のお茶をいただき、それを空にしてから、すでに30分は経過していた。論より証拠――その証明をするためなのか、コトリは事件のことについてはあれから一言も発していない。むしろ、誰も言葉を発さなかった。ただただ無言の気まずい空気が流れた。

 玄関のほうから物音がしたことで、気まずい空気は一気に払拭された。

「ったく、ホームセンターだったら、もう少し品揃えを整えておけってんだよ」

 随分とご機嫌ナナメな鯖洲の愚痴も、この気まずい空気の中では救いに思えた。

「セバスチャン、よくぞ戻ったわ」

 鯖洲の帰りを待っていたのは一里之だけではない。コトリが玄関のほうへと向かい、冥もそれに続く。残された一里之も仕方なく玄関へ。

「うん――これだけ揃っていれば充分ですわ」

 玄関に向かうと、鯖洲が持つビニール袋の中を覗き込みながら、コトリが満足げに頷いているところだった。

「それではお見せしますわ。あの時、お風呂場で何が起きていたのかを――」
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