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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】

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 外に出ているのであろうか。随分と電話の向こう側がうるさい。

「そ、そうか。それじゃあ、袴田さんのお宅を訪ねた時間は――」

 一里之の言葉を遮るかのように大東が言う。

「そんなもの覚えてないね。あ、悪いけどお前と違って俺は取引先との接待で忙しいんだわ。もう切るからな」

 ふと気がつくと、コトリが背伸びをして、一里之のスマートフォンに聞き耳を立てていた。電話が切れ、そこに残ったのは通話が切れたことを伝える単音のみ。

「中々に憎たらしい野郎ですわ」

 まさか電話越しに、社長の令嬢が聞き耳を立てているとは思わないだろう。小物感は拭えないが、残念ながら心の中でざまぁみろと思ってしまう。

「結局のところ、訪ねた順番は確定しませんでしたね。もちろん、この3人のいずれかが殺害した――と決まったわけではありませんから」

 煙草を吸ってから帰ってきた鯖洲を見て、おそらく体がニコチンを欲してしまったのであろう。可愛らしいポーチを取り出す冥。

「それによ、日中にここを訪れたところで、どうやって死亡推定時刻に殺すよ? 実際の死亡推定時刻は、袴田が遺体を発見する前後だぜ」

 鯖洲が喋り出すのを待っていたのか、さりげなく「失礼」と漏らして外に出ようとした――が、鯖洲に対してコトリが発した一言により、思い留まったようだった。

「それは可能ですわね。ちょっとしたアクロバティックな仕掛けが必要になるけれども」

 ――もしかして、コトリはすでに何かしらに気づいているのだろうか。冥が「お嬢様、それはどういうことで?」と振り返った。

「あら、今言ってしまったら、ここにお泊りができなくなりますわ。住むのは無理だとしても、せめて今夜一晩くらい、お枕投げしたいですもの」

 そもそも、男女の部屋は別々になるだろうし、枕投げもそこまで盛り上がりはしないだろう。ただ――どうやらコトリの中では、すでにここは住むべき物件ではないということになっているようだ。少なくとも、彼女の中でこの物件に対する興味が削がれたらしい。それすなわち、事件の真相が見えてきているということだ。

「――左様ですか。ならば、わたくしは少しばかり失礼いたします。お枕投げに負けぬよう対策を練って参ります」

 冥とコトリによる枕投げ――ちょっとだけ混じってみたいと思ったのは秘密にしておこう。鯖洲は小さく舌打ちをすると「帰れるなら、さっさと帰れたほうがいいんだがなぁ」と漏らす。
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