ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

ケース２ 干しかんぴょう殺人事件【出題編】

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「まぁ、それを言ってしまったら身も蓋もないんですけど」

　資料を見るに、犯行が可能だったのは袴田本人ののみだ。第一発見者を疑うのが捜査のセオリーと言われているように、もし今回が他殺によるものだとすれば、鯖洲の言うように袴田がもっとも怪しくなるだろう。

「ですが解せませんね。もし、袴田様の犯行であれば、かんぴょうはどう説明します？」

「あれだ。かんぴょうの呪いだと思わせるためじゃねぇか？」

　冥の疑問に鯖洲が即答。袴田はかんぴょうの呪いを信じていた。ゆえに、かんぴょうの呪いであるという演出のために、現場にかんぴょうを残したと考えることができる。

「ごく一般的に考えて、かんぴょうが縁起でもない恐ろしいものだと考える方は少ないでしょう。大体、かんぴょうと呪いがどう結びつくのか理解に苦しみます。つまり、何が言いたいのか分かります？　そのように現場を偽装するのは、かんぴょうの呪いを信じている袴田様のみです。よって、そんなことをすれば自分が犯人だと言っているようなものではないですか」

　袴田の視点から考えてみると、冥の言っていることは間違っていない。かんぴょうを現場に残し、それを呪いに見せかけるという手段は、かんぴょうの呪いを信じている人間にしかできない。ゆえに、かんぴょうが偽装工作だとしたら、かんぴょうの呪いを信じている人間の仕業ということになる。すなわち、袴田が自ら犯人だと名乗り出ているようなものなのだ。

「ちなみに、警察の見解は？」

　コトリの言葉に自然と資料へと目を落とす癖がついてしまったようだ。当然ながら、袴田は犯人として捕まってはいない。となると、警察はどのような見解を出したのであろうか。

「自殺――だと断定したようです。決め手となったのは、首に残されていた跡。綺麗にタオルの跡しか残っていなかったそうです。首に巻かれたタオルにより、袴田さんの奥さんは窒息して亡くなった。ゆえに他殺の線は薄いとの判断を下したようです」

　警察の捜査がどれだけのものなのかは分からないが、それなりに鑑識の人間が入ったりするのであろう。地元の知り合いに刑事がいるのであるが、その辺りの詳しいことは聞いたことがない。今後のためにも、今度地元に帰るようなことがあったら、詳しく話を聞いてみたいものだ。

「――色々と悩ましい点が多いですわね。だが、それが良きですわ！　さぁ、今日からここに住みますわよ！」