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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】
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「――それはそうと、お嬢。今回はかなり即決だったなぁ。その決め手はなんだ?」
前回、あの廃墟に住むと言い出した時は、自分の耳を疑った。しかしながら、慣れというのは恐ろしいものであり、同様の発言ながら、今回はあまり動揺しなかった。あまり慣れたくはないのだが。
「決め手となったのは――このシャワーホルダーの高さですわ」
彼女が事故物件に住みたいと思う条件、きっかけというのも実にシンプル。すなわち、その事故物件に謎を抱いた時だ。前回の廃墟では、偶然的なものだという結果に着地はしたものの、密室という謎に惹かれて、彼女は事故物件に住むと言い出した。その謎こそが――今回はシャワーホルダーの高さらしい。
「亡くなった奥様の身長は152センチ。わたくしより数センチほど高いことになるけれど、どう考えたって上のホルダーには手が届きませんわ」
コトリはそう言うと、壁に手をついて、もう片方の手を伸ばし、律儀にもホルダーに手が届かないことを体現する。
「浴槽のふちにのぼれば届くんじゃねぇか?」
「いいえ、この浴室は一般的なそれよりも洗い場が広く設計されているようだから――」
鯖洲の言葉に、これまた律儀にも浴槽のふちにのぼろうとするコトリ。浴槽のふちに両足をかけて立ち上がろうとすると同時に、大きくバランスを崩してしまった。まるでアニメの表現であるかのごとく、腕をぶんぶん回してバランスを取ろうとするが、しかし落ちるのは時間の問題だった。一里之は無意識にコトリのそばに駆け寄り、まさしく浴槽から洗い場のほうへと倒れ込もうとしていたコトリを受け止めた。お姫様抱っこならぬお嬢様抱っこである。
「大丈夫――ですか?」
一里之が受け止めたことにより大事にはいたらなかったコトリ。驚いたような顔をして一里之のことを見ると、やや頬を赤らめて「ありがとう――」とだけ呟いた。断言しよう。可愛いは正義であると。
「おいおい、こいつは玉の輿一直線じゃねぇか? うまくいったら俺に払えよ。紹介料と仲介料」
コトリを降ろしてやると、さすがはそちらの世界の人間と言わんばかりに、ビジネスの話をしてくる鯖洲。あえて強請りという言葉を使わないだけ、ありがたいと思って欲しい。
「そ、そんな下心があってやったことじゃありませんから」
とっさに体が動いた。これは本当であり、この行動に算段や思惑などはなかった。
前回、あの廃墟に住むと言い出した時は、自分の耳を疑った。しかしながら、慣れというのは恐ろしいものであり、同様の発言ながら、今回はあまり動揺しなかった。あまり慣れたくはないのだが。
「決め手となったのは――このシャワーホルダーの高さですわ」
彼女が事故物件に住みたいと思う条件、きっかけというのも実にシンプル。すなわち、その事故物件に謎を抱いた時だ。前回の廃墟では、偶然的なものだという結果に着地はしたものの、密室という謎に惹かれて、彼女は事故物件に住むと言い出した。その謎こそが――今回はシャワーホルダーの高さらしい。
「亡くなった奥様の身長は152センチ。わたくしより数センチほど高いことになるけれど、どう考えたって上のホルダーには手が届きませんわ」
コトリはそう言うと、壁に手をついて、もう片方の手を伸ばし、律儀にもホルダーに手が届かないことを体現する。
「浴槽のふちにのぼれば届くんじゃねぇか?」
「いいえ、この浴室は一般的なそれよりも洗い場が広く設計されているようだから――」
鯖洲の言葉に、これまた律儀にも浴槽のふちにのぼろうとするコトリ。浴槽のふちに両足をかけて立ち上がろうとすると同時に、大きくバランスを崩してしまった。まるでアニメの表現であるかのごとく、腕をぶんぶん回してバランスを取ろうとするが、しかし落ちるのは時間の問題だった。一里之は無意識にコトリのそばに駆け寄り、まさしく浴槽から洗い場のほうへと倒れ込もうとしていたコトリを受け止めた。お姫様抱っこならぬお嬢様抱っこである。
「大丈夫――ですか?」
一里之が受け止めたことにより大事にはいたらなかったコトリ。驚いたような顔をして一里之のことを見ると、やや頬を赤らめて「ありがとう――」とだけ呟いた。断言しよう。可愛いは正義であると。
「おいおい、こいつは玉の輿一直線じゃねぇか? うまくいったら俺に払えよ。紹介料と仲介料」
コトリを降ろしてやると、さすがはそちらの世界の人間と言わんばかりに、ビジネスの話をしてくる鯖洲。あえて強請りという言葉を使わないだけ、ありがたいと思って欲しい。
「そ、そんな下心があってやったことじゃありませんから」
とっさに体が動いた。これは本当であり、この行動に算段や思惑などはなかった。
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