ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】

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 この浴槽にはシャワーホルダーがふたつある。それこそ、思っていた以上に高い位置にだ。冥くらいの背丈があれば、手を伸ばせば届きそうなものだが、しかしコトリは明らかに身長が足りない。冥が比較的長身ということもあるから、まず普通の一般的な身長の女性では、上のホルダーに手が届かないかもしれない。

「――こちらにタオルをかけたの?」

 鯖洲に対して疑問を返すコトリ。

「それは、そこにいる小僧に聞いてくれ。大体、首を吊るにしても、下のホルダーは明らかに低すぎるだろ? だったら、上のホルダーが使われたって考えたほうがいいだろ?」

 鯖洲とコトリの視線が一斉に集まる。一里之は資料の中から、両名が御所望であろう情報を探し出した。

「あ、はい。上のほうのホルダーにタオルがかけられていたみたいですね。遺体が発見された際、ぎりぎり遺体のつま先が床につくかどうかの状態だったみたいです。ただ、少し奇妙なことがあって――」

 それは、情報として書かれてはいなかった。書かれてはいなかったが、明らかに不自然だった。違和感があるのは、遺体が発見された際の見取り図だ。

「どうやら、被害者はこのような形で首を吊っていたみたいなんです」

 どう説明しようか迷った挙げ句、一里之は自らの体をもってして表現することにした。上のホルダーを掴み、体制をやや前に傾ける。例えるのならば、スキージャンプで飛んでいる最中の選手のような体制。遺体はシャワーノズルのホルダーにかけられたタオルに首を支えられるような形で、前傾体勢になった状態で発見されたらしい。

「そりゃまた、随分アグレッシブな首の吊りかただな。まぁ、やってやれないことはないだろうが」

 首吊りという形としては、明らかにおかしい首の吊りかた。むしろ、そんな体勢で事切れている伴侶の姿を見れば、呪いだとも言いたくなる。一里之は体勢を元に戻すと続けた。

「後、現場には上部に穴がふたつ空いたバスタオルが落ちていたみたいです。そして、特筆すべきというか、今回の一件で明らかな点。それは、浴室に干しかんぴょうが残されていたということです」

 これこそが奇妙な点――というか、むしろ滑稽な点になってしまう。なぜゆえに、浴室に干しかんぴょうが残されていたのか。しかも、資料によると1本やそこらではなく、かなりの数のかんぴょうが見つかったらしい。

「――少し確認したいのですけど、亡くなられた方の身長はどれくらいだったのかしら?」
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