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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】

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 やはり、冥の目から見ても、今日の鯖洲は基本的に機嫌が良いらしい。一里之は前回の鯖洲しか知らないからギャップがあるのだが、意外とそこまで悪い人ではないのかもしれない。住宅街の向こうへと消えゆくトラックを見送りつつ、そんなことを思った。

 冥は改めて車を動かし、袴田邸に横付けする。

「あちらから解放された矢先で申し訳ありませんが、少し手伝ってください。これだけの大きさのお宅となれば、掃除に手間がかかりそうです。あの人のことですから、どうせ掃除なんてしていないでしょうし」

 運び出せる荷物をトラックに乗せるだけ乗せたら、後のことなんて知ったことではないとばかりに現場を離れる。なるほど、そちらのほうが鯖洲のイメージに近いから、やはり今日はたまたま機嫌が良いだけであり、前回の彼が基本的なデフォルトとなるのだろう。

 箒やモップなどを車の後部から取り出す冥。メイドの格好も相まって、ここまで掃除道具が似合う人なんて、そうそう探してもいないのではないかと錯覚する。

「簡単で構いませんから、掃き掃除をお願いします。こちらは拭き掃除をしますので」

 さすがに冥だけでは持ちきれないようなので、その道具のあらかたを一里之が代わりに持ってやる。冥は抑揚のない声で「ありがとうございます」とだけ言うと、先に玄関先へと向かった。鍵は一里之が預かったままだが、しかし鯖洲が出て行ったばかりだ。あの状況で、わざわざ鯖洲が鍵をかけるなんてことはしないだろう。案の定、玄関の鍵は空いていたようで、冥は中へと姿を消す。

 冥と分担しての掃除が始まった。一度ここを訪れていたから、広さはそれなりに把握しているつもりだった。しかしながら、想定していた以上に広い。とにかく広い。とりあえず掃き掃除とのことだったが、どこから手をつけていいのか分からない。ただ、やはり鯖洲が掃除なんてしてくれているわけもなく、中々にやり甲斐があった。

 冥とは基本的に別行動となったから、会話を交わすこともなく黙々と作業を進める。あらかた片付いた頃になって、ようやく鯖洲が戻ってきた。時間にしておおよそ1時間くらいは掃除に要したか。

「全く、玄界灘も人使いが荒いなぁ。いきなり連絡があったかと思ったら、開口一番で、引越しの手伝いをしろ――だもんなぁ」

 ちょうど、玄関先で冥と合流した矢先に戻ってきた鯖洲の手には開缶済みと思われるビール缶があった。軽く一杯引っ掛けているらしい。
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