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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】
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一里之は資料をめくる。移動中の車内で文字を読むと車酔いするから嫌なのだが――。
事件の現場となったのは袴田家のお風呂場だ。お風呂場は建物の東側に位置しており、広さは一般的なそれと比べて広いようだ。遺体が発見された際、袴田の妻は裸であり、タオルをシャワーノズルをかけるフックに引っ掛けて首を吊ったようだ。それなりの高さがなければ首は吊れないように思われがちだが、実際のところ高さというのは必要ないらしい。ドアノブにタオルを引っ掛けて首を吊ってしまった――なんて事例も聞いたことがある。
現場となった風呂場には何故か大きなバスタオルが落ちていた。袴田の妻のものらしく、なぜかタオルの上部にパンチ穴らしきものが開けられていたらしい。この辺りのことは夫である袴田にも事情を訊いたらしいが、そんなものは知らないとのこと。
そして……辺りには、かんぴょう。乾燥した状態のものもあれば、すっかり水に戻されてしまっていたものもあったらしいが、とにもかくにも風呂場には、かんぴょうが散乱していたようだ。このかんぴょうそのものは、袴田家にあったものらしい。袴田本人はかんぴょうの呪いだとか言っていたくせに、袴田家では呪いの対象を食べる文化があったらしい。まぁ、かんぴょう巻きは美味しいから仕方がない。
「お嬢様より先に――というのは無粋ではありますが、現場の様子がどうにもおかしいと思いませんか?」
一里之がある程度読み進めるのを待っていたのであろう。冥が車線を変更しながら問うてくる。メイド服であるがゆえに下はスカートであり、座っているものだから、かなり際どいところまで足が露わになってしまっている。目のやりどころは資料しかないだろう。すでに車酔いの脅威を感じ始めてはいたが、一里之は資料を眺めるふりをしつつ口を開いた。
「やっぱり、かんぴょうの存在ですかね」
「もちろん、常識的に考えて、お風呂に入りながら、かんぴょうの水戻しをしようとでも思わない限り、お風呂場にはそぐわないものですね。ただ、冥が少し引っ掛かるのはそこではないのです」
ハンドルを片手で握りつつ、器用に電子煙草の用意をする冥。鯖洲ほどではないようだが、冥もニコチンがなければ生きていけないのだろう。一里之自身がそうだから良く分かる。むしろ、電子煙草で我慢できること自体が凄いとさえ思う。何度も辞めようとは思ったが、思うばかりで現在にいたる。
事件の現場となったのは袴田家のお風呂場だ。お風呂場は建物の東側に位置しており、広さは一般的なそれと比べて広いようだ。遺体が発見された際、袴田の妻は裸であり、タオルをシャワーノズルをかけるフックに引っ掛けて首を吊ったようだ。それなりの高さがなければ首は吊れないように思われがちだが、実際のところ高さというのは必要ないらしい。ドアノブにタオルを引っ掛けて首を吊ってしまった――なんて事例も聞いたことがある。
現場となった風呂場には何故か大きなバスタオルが落ちていた。袴田の妻のものらしく、なぜかタオルの上部にパンチ穴らしきものが開けられていたらしい。この辺りのことは夫である袴田にも事情を訊いたらしいが、そんなものは知らないとのこと。
そして……辺りには、かんぴょう。乾燥した状態のものもあれば、すっかり水に戻されてしまっていたものもあったらしいが、とにもかくにも風呂場には、かんぴょうが散乱していたようだ。このかんぴょうそのものは、袴田家にあったものらしい。袴田本人はかんぴょうの呪いだとか言っていたくせに、袴田家では呪いの対象を食べる文化があったらしい。まぁ、かんぴょう巻きは美味しいから仕方がない。
「お嬢様より先に――というのは無粋ではありますが、現場の様子がどうにもおかしいと思いませんか?」
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「やっぱり、かんぴょうの存在ですかね」
「もちろん、常識的に考えて、お風呂に入りながら、かんぴょうの水戻しをしようとでも思わない限り、お風呂場にはそぐわないものですね。ただ、冥が少し引っ掛かるのはそこではないのです」
ハンドルを片手で握りつつ、器用に電子煙草の用意をする冥。鯖洲ほどではないようだが、冥もニコチンがなければ生きていけないのだろう。一里之自身がそうだから良く分かる。むしろ、電子煙草で我慢できること自体が凄いとさえ思う。何度も辞めようとは思ったが、思うばかりで現在にいたる。
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